腫瘍の良性と悪性はどのように決まるのでしょうか。最終的には術後の病理組織診断で決まります。病理医が病理組織診断報告書に記載する内容次第ということです。つまり病理診断名によるのですが、これが分かりにくいことがあります。また、主治医である臨床医は給付金請求用診断書には疑い病名を記載してくることもあるようです。傷病名欄には癌と書いてあるものの、最終病理診断名が悪性疾患でないこともあります。この場合には、病理診断名に基づいて支払査定をするのが通常の実務です。
WHO から ICD-O-3(3.1 版)として書籍版が 2013 年に刊行され、邦訳版が、国立がん研究センターから刊行されていました。これがバージョンアップされ、院内がん登録において2020年症例よりICD-O3.2が採用されることになりました。現行の「国際疾病分類腫瘍学第3 版」(通称・紫本)の改訂は未定のようです。
ICD-O-3.2 を掲載したURLリンクはここになります。
ICD-10第2章新生物(C00-D48)の腫瘍の分類をもっと細かく分類したものが、国際疾病分類腫瘍学 ICD-O(International Classification of Diseases for Oncology)の第3版です。腫瘍の局在 topography(部位,T)と形態診断morphology(病理組織診断,M)との組合せで用いられます。この基準には、組織型を示す4桁のコードが付されたありとあらゆる腫瘍が分類されています。その4桁コードの次に性状を示す5桁目として/0、/1、/2、/3、/6、/9という分類があります。
/0は、良性です。ICD10のD10~D36に該当します。 /1は、良性・悪性が不明ということです。ICD10のD37~D48に該当します。 したがって境界悪性、低悪性度、悪性度不明もここに含まれます。 /2は、上皮内新生物です。ICD10のD00~D09に該当します。 /3、/6は、悪性新生物で、ICD10のコードCに該当となります。 /9は、悪性だけれど、原発、転移が不明というものです。
国際疾病分類腫瘍学ICD-O-3の使用上の注意に次のようにがん関連の医学用語を定義しています。
(1)cancer、がん(癌) 悪性腫瘍一般。包括的な用語。本文中においては、「がん登録機関」や「がん登録者」等の訳語として使用している。
(2)carcinoma、癌腫(用語の末尾で用いられる場合は癌。例:胃癌、肺癌) 消化器や呼吸器粘膜・肝・腎などに発生する上皮性悪性腫瘍。運動器や軟部組織などの非上皮性悪性腫瘍を肉腫と呼ぶのに対する言葉。
(3)tumor、腫瘍(英 tumour) 生体内において、その個体自身に由来する細胞でありながら、その個体全体としての調和を破り、時に他から何らの制御を受けることなく、又自らの規律に従い、過剰の発育をとげる組織をいう。
(4)sarcoma、肉腫 結合組織、脈管組織、骨・軟骨・筋・神経など、中胚葉や神経芽胚葉に由来する非上皮性組織を発生母地にする悪性腫瘍。
(5)neoplasm、新生物 腫瘍と同義に用いられる。細胞増殖によって正常細胞より速く成長する異常組織で、時に成長を開始させた刺激が終わった後にも成長し続ける。新生物は構造機構の部分的あるいは完全な欠如や、正常細胞との機能的な協調の欠如がみられ、通常、はっきりした組織の塊をつくる。良性と悪性の両方があり、悪性新生物は、癌、癌腫及び肉腫を意味する。
(9)differentiation、分化度 腫瘍がその起源となった正常な組織にどの程度似ているか否かを意味する。
注)病理組織診断報告書などでは、highly differentiated やpoorly differentiatedと表現されます。一般的に未分化(poorly)の方が予後不良です。
(10)grade、異型度 正常な組織、細胞と比べて個々に形態学的に異なる程度、度合いを意味する。また、ICD-O以外の分類で独自に採用している腫瘍の様々な段階を、単に「grade」と表現している場合がある。
注)異型度は、細胞同士のつながりで形成される構造パターン(構造異型度)、核の形の多様性(核異型度 nuclear grade)、細胞の核分裂の程度 (核分裂像数)の3つの因子から判定されます。
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