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関節リウマチ

関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis; RA)とは、身体のあちこちの関節に炎症が起こり、関節が腫れて痛む多発性の関節炎です。主な病変は関節の滑膜にあらわれる滑膜炎です。その他、胸膜炎、皮下結節(リウマトイド結節)、血管炎など全身の結合組織に病変をきたすことがあります。関節破壊の進行は、関節リウマチの発症後2年以内、特に1年以内が速いと言われています。関節リウマチは、膠原病の中で圧倒的に患者数の多い疾患で、約70万人と推計されています。



関節リウマチは、30~50歳代の女性に好発し、男女比は1:3~4と女性に多いです。1日1時間以上で6週間以上続く、指・膝・肘関節の対称性腫脹・疼痛が特徴で、好発部位は手指近位指節間(proximal interphalangeal; PIP)関節、中手指節間(metacarpophalangeal; MCP)関節、手関節、足関節、中足趾節関節(metatarsophalangeal; MTP)です。朝起きたときに手足がこわばります。リウマトイド結節と呼ばれる皮下結節ができます。また全身症状として、易疲労感、微熱、体重減少、食思不振があります。


血液検査にて血沈上昇、急性炎症時や組織の壊死などの炎症反応であるCRP(+)、ヒトIgGのFc部分と反応する自己抗体のリウマトイド因子(RF)(+)がみられます。RFの基準値は、15 IU/ml未満です。


抗環状シトルリン化ペプチド抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody)つまり抗CCP抗体は、上皮細胞に存在するフィラグリンのシトルリン残基を認識する抗体です。抗CCP抗体は、関節リウマチに特異性の高い抗体で、その診断のみでなく、関節リウマチの確定診断前にその発症を予測することもできます。診断、治療の反応性、骨破壊性の予測をするための重要な血清学的マーカーと考えられています。基準値は、4.5U/mL未満です。抗CCP抗体は、関節リウマチ患者の70~80%で陽性となります。


血沈(赤血球沈降速度)とはガラス管の中で赤血球の沈降を測定するもので、血漿タンパクの異常により変化します。特に炎症で上昇します。


関節液の所見では、関節液の混濁、蛋白量の上昇、粘稠性の低下、好中球の上昇やIgG‐リウマトイド複合体(IgG-RF)(+)、補体価の低下がみられます。補体とは血清内に存在して免疫反応・感染・防御などに関与するたんぱく質の総称です。自己免疫性疾患では補体が消費されるため、補体値は低値を示します。


関節のX線検査で、骨びらん・骨破壊や関節変形などが見られるときに、関節リウマチを疑います。確定診断のため、滑膜および皮下結節の生検を行うことがあります。


関節リウマチの治療は、早期から寛解を目指してメトトレキサート(methotrexate; MTX)を第一選択薬剤として使用し、それでも効果不十分な場合には生物学的製剤を併用する積極的治療(逆ピラミッド療法)です。これにより、RAの寛解導入率は飛躍的に改善し、関節破壊の阻止が可能となりました。なお、60歳以上RF高力値の高齢者RA患者は予後不良です。下図のような治療アルゴリズムが提唱されています。




抗リウマチ療法は、金製剤、D-ペニシラミン、サラゾスルファピリジン(サラゾピリンやアザルフィジン)、免疫抑制薬(メトトレキサート、ミゾリピン、アザチオプリン、シクロホスファミド、ヤヌスキナーゼ阻害薬)を服用します。また、生物学的製剤(DMARD)の抗TNFα抗体(インフリキシマブ)や抗IL-6抗体を使用することもあります。


基礎療法、薬物療法、リハビリテーションが、関節リウマチの基本的な治療方法です。基礎治療とは十分な休養、局所の適度の安静と運動、温熱を行います。薬物療法は効果発現時期より、1~2週間以内に効果が期待できる抗炎症療法と1~3ヶ月かかる抗リウマチ療法があります。抗炎症療法は、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)によりプロスタグランジン(痛みの元)合成を阻害します。適応のある場合に限り、少量投与法でステロイドを投与する場合があります。これは悪性関節リウマチや急速進行型RAなどが適応となります。


(参考)

米国リウマチ学会「関節リウマチ分類基準1987年」

宮坂信之「関節リウマチ」日本内科学会雑誌 104:2110~2117,2015

鈴木康夫「関節リウマチの診断と治療」日本内科学会雑誌 104 : 519~525, 2015

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