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急性骨髄性白血病

  • 12 分前
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急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia:AML)は、造血幹細胞の分化異常により骨髄内に未熟な白血球(芽球)が異常増殖し、正常な造血を抑制する造血器悪性腫瘍です。芽球は本来の成熟した白血球へと分化する過程が阻害されるため、骨髄中で蓄積し、末梢血中にも出現します。この結果、貧血や感染症、出血傾向などの症状が急速に進行し、治療を要する緊急疾患です。


AMLの発症にはさまざまな要因が関与しています。代表的なものとして、特定の染色体異常や遺伝子変異(たとえばt(8;21)、inv(16)、FLT3、NPM1、TP53など)が知られており、これらは疾患の発症だけでなく予後や治療方針にも影響を及ぼします。また、骨髄異形成症候群(MDS)や骨髄増殖性腫瘍(MPN)から進展する症例や、化学療法や放射線治療後に発症する治療関連AML(t-AML)もあり、特に後者は予後不良とされます。さらに、Fanconi貧血やDown症候群などの先天性疾患もリスク因子となります。


疫学的には、AMLは成人において最も頻度の高い急性白血病であり、発症の中央値年齢は68〜70歳と高齢者に多く見られます。年間発症率は人口10万人あたり4〜5人程度で、男性にやや多い傾向があります。小児においては急性リンパ性白血病(ALL)の方が主であり、AMLの発症は稀です。


症状は急速に進行し、正常血球の減少による全身症状が主体です。赤血球の減少による貧血症状(倦怠感、動悸、息切れ)や、好中球減少に伴う易感染性(発熱、肺炎、敗血症)、血小板減少による出血傾向(鼻出血、歯肉出血、紫斑)などがよく見られます。また、芽球の臓器浸潤により歯肉腫脹、皮膚浸潤(白血病皮膚症)、肝脾腫、中枢神経症状を呈することもあります。初発症状としての発熱は感染症との鑑別を難しくします。


診断にはまず血液検査での異常(汎血球減少または白血球増加、芽球出現)を確認し、骨髄穿刺によって診断が確定されます。AMLでは骨髄中の芽球が20%以上であることが診断基準とされ、さらにフローサイトメトリーによる免疫表現型解析や染色体・遺伝子検査によって、病型分類およびリスク評価が行われます。特に、t(8;21)、inv(16)、NPM1変異などは予後良好因子とされる一方、FLT3-ITD高発現、TP53変異、複雑核型などは予後不良因子として重要です。WHO 2022分類やELN 2022リスク分類など、最新の病型分類は分子レベルの異常に基づく詳細な層別化を可能にしています。


AMLの治療は、患者の年齢、全身状態、分子異常の有無、初発か再発かなどに応じて個別化されます。若年者や体力のある患者には、「7+3療法」(シタラビン7日間+ダウノルビシンまたはイダルビシン3日間)を基本とする強力な寛解導入療法が行われます。寛解導入後は、再発予防のための地固め療法として高用量シタラビン(HiDAC)や、予後不良群や再発リスクの高い群には同種造血幹細胞移植が検討されます。


近年では分子標的治療の進展により、FLT3阻害薬(ミドスタウリン、ギルテリチニブ)や、IDH1/2阻害薬(ivosidenib、enasidenib)、BCL-2阻害薬(ベネトクラクス)などが臨床導入され、従来の化学療法との併用で効果が高まっています。特に高齢者や化学療法不適応患者には、アザシチジンやデシタビンなどの低強度療法や、ベネトクラクスとの併用療法が選択されるようになっています。急性前骨髄球性白血病(APL)はATRA(全トランス型レチノイン酸)や亜ヒ酸(ATO)の導入により、寛解率・生存率ともに著しく改善しました。


予後は非常に多様で、分子異常やリスク分類に大きく依存します。良好リスク群では5年生存率が60%以上に達する一方、不良リスク群では10〜20%と厳しい数字です。高齢者や再発・難治例ではさらに予後が不良となり、支持療法や緩和ケアが主体となるケースも少なくありません。今後の課題は、高齢者や遺伝子異常陽性群に対するより個別化された治療戦略の確立と、長期生存に向けた移植以外の治療選択肢の開発です。


参考文献

1.       NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Acute Myeloid Leukemia. Version 1.2024.

2.       Döhner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults: 2022 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2022;140(12):1345–1377.

3.       日本血液学会.急性白血病診療ガイドライン2023年版.

4.       DiNardo CD, et al. Venetoclax combined with low-dose cytarabine for untreated elderly AML. N Engl J Med. 2020;383(7):617–629.

5.       Kantarjian HM, et al. Treatment of AML in older patients. Cancer. 2021;127(11):1800–1815.






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