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錐体ジストロフィー

ヒトの眼球の奥にある網膜は視覚情報を映すスクリーンのような働きをします。この薄い膜である網膜には光を感じる細胞があります。光を電気信号に変えて大脳皮質へ伝える役割を果たしています。網膜にある視覚細胞には、「錐体細胞」と「桿体細胞」の2種類があります。錐体細胞は色を見分ける働きを持ち、明るい場所でよく機能します。赤・緑・青の光に反応する3種類があり、細かいものをはっきり見るのが得意で、主に網膜の中心部である黄斑部に多く分布しています。一方、桿体細胞は明るさの違い、つまり明暗を感じ取る細胞で、暗い場所でもよく働きます。色を感じることはできませんが、弱い光にも敏感に反応し、白黒の世界をとらえることができます。これらの細胞は主に網膜の周辺部に多く存在します。この錐体細胞が主に障害される錐体ジストロフィーについて以下に述べます。



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疾患概念

錐体ジストロフィーは、網膜の錐体細胞が主に障害される遺伝性の網膜変性疾患です。視力低下、色覚異常、羞明などの症状が現れ、進行性の場合は視野狭窄や夜盲を伴うこともあります。錐体細胞の変性が主であり、杆体細胞の障害は二次的または軽度です。この疾患は、進行性と非進行性(定常型)に分類されます。


原因

錐体ジストロフィーは、主に遺伝子変異によって引き起こされます。以下の遺伝子が関連しています。

  • GUCY2D:網膜の光受容体機能に関与。

  • ABCA4:視細胞の老廃物除去に関与。

  • CRX:視細胞の分化と維持に関与。

  • RPGR:細胞内輸送に関与。


遺伝形式は常染色体優性、常染色体劣性、X連鎖性があり、家族歴の有無にかかわらず発症することがあります。


疫学

錐体ジストロフィーの有病率は、人口10万人あたり1~9人と推定されています。性別や人種による明確な差異は報告されていません。発症年齢は小児期から成人期まで幅広く、進行速度や症状の重症度も個人差があります。


症状

錐体ジストロフィーの主な症状は以下の通りです。

  • 視力低下:中心視力の低下が初期症状として現れます。

  • 色覚異常:赤緑色覚異常や青黄色覚異常が見られます。

  • 羞明:明るい光に対する過敏反応が生じます。

  • 中心暗点:視野の中心に暗点が現れます。


進行性の場合、夜盲や周辺視野の狭窄が加わることがあります。


検査

診断には以下の検査が有用です。

  • 視力検査:中心視力の評価。

  • 色覚検査:色覚異常の種類と程度を評価。

  • 眼底検査:網膜の萎縮や色素沈着の有無を確認。

  • 光干渉断層計(OCT):網膜構造の詳細な評価。

  • 蛍光眼底造影(FA):網膜色素上皮の機能評価。

  • 網膜電図(ERG):錐体細胞の機能評価。

  • 遺伝子検査:原因遺伝子の特定。


診断

診断は、臨床症状、眼底所見、ERG、遺伝子検査の結果を総合的に判断します。ERGでは、光条件下での錐体応答の低下が特徴的です。遺伝子検査により、特定の遺伝子変異が確認されることで診断が確定します。


治療

現在、錐体ジストロフィーに対する根本的な治療法は確立されていませんが、以下の対症療法が行われます。

  • 視覚補助具の使用:拡大鏡や読書補助具など。

  • 遮光眼鏡の使用:羞明の軽減。

  • ビタミンAや抗酸化物質の補充:進行抑制の可能性。

  • 遺伝カウンセリング:家族への情報提供とサポート。


また、遺伝子治療の研究が進行中であり、将来的な治療法として期待されています。


予後

予後は個人差がありますが、進行性の場合、視力の低下が進行し、最終的には法的失明に至ることもあります。非進行性の場合、視力は一定のレベルで安定することがあります。早期の診断と適切な対症療法により、生活の質を維持することが可能です。


中心視力の低下も起こる可能性があるため、普通死亡保険では特定障害不担保(眼)の付加が必須となるでしょう。






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