網膜格子状変性
- 牧野安博MD&MBA
- 7月15日
- 読了時間: 3分
網膜格子状変性(lattice degeneration)は、網膜の周辺部に生じる特異的な変性病変であり、網膜剥離のリスク因子として重要視されています。本稿では、最新の医学論文および診療ガイドラインに基づき、網膜格子状変性の疾患概念、原因、疫学、症状、検査、診断、治療、予後について詳細に解説します。

疾患概念
網膜格子状変性は、網膜周辺部における網膜の菲薄化と血管の白線化を特徴とする病変で、検眼鏡的に格子状の模様を呈します。この病変は、網膜裂孔や網膜剥離の発生に関連し、特に若年者において注意が必要とされています。 この病名は,変性巣を横切る血管が白線化して格子細工模様を呈することによります。裂孔原性網膜剥離の約30%は網膜格子状変性が原因で起こるので慎重な経過観察が必要な病変です。正常眼の約10%にみられ、家族内発生も知られています。網膜格子状変性は網膜硝子体変性症のひとつです。
原因
網膜格子状変性の正確な原因は未だ完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因:家族内発生が報告されており、遺伝的素因が示唆されています。
硝子体の変化:硝子体の液化や後部硝子体剥離に伴い、網膜への牽引が生じ、格子状変性が発生すると考えられています。
疫学
網膜格子状変性は、一般人口の約6~10%に認められると報告されています。近視眼においてその頻度が高く、特に強度近視の患者での発生率が高いとされています。また、男女差は明確ではありませんが、若年者における網膜剥離のリスク因子として重要視されています。
症状
多くの場合、網膜格子状変性自体は無症状であり、定期的な眼科検診で偶然発見されることが多いです。しかし、以下の症状が現れる場合があります。
飛蚊症:視界に小さな浮遊物が見える。
光視症:光がないのに閃光が見える。
視力低下:網膜裂孔や網膜剥離が進行した場合に生じる。
これらの症状が現れた場合、速やかな眼科受診が必要です。
検査
網膜格子状変性の診断には、以下の検査が有用です:
眼底検査:散瞳下での詳細な眼底観察により、格子状の病変を確認します。
光干渉断層計(OCT):網膜の断層像を取得し、網膜の菲薄化や裂孔の有無を評価します。
超音波検査:硝子体の状態や網膜剥離の有無を評価する際に用いられます。
診断
診断は主に眼底検査所見に基づきます。網膜周辺部における網膜の菲薄化、血管の白線化、格子状の模様が特徴的です。無症候性の場合が多いため、定期的な眼科検診が重要です。
治療
網膜格子状変性自体に対する積極的な治療は通常必要ありませんが、以下の場合には予防的治療が検討されます。
網膜裂孔の存在:網膜裂孔が確認された場合、網膜剥離のリスクが高いため、レーザー光凝固術や冷凍凝固術が行われます。
家族歴や強度近視の存在:網膜剥離のリスクが高いと判断される場合、予防的治療が考慮されます。
最新の診療ガイドラインでは、無症候性の網膜格子状変性に対する予防的光凝固術は一般的に推奨されていませんが、個々のリスク評価に基づき判断されます。
予後
網膜格子状変性自体は良性の経過をたどることが多いですが、網膜裂孔や網膜剥離を合併した場合、視力予後は不良となる可能性があります。定期的な眼科検診と、症状出現時の迅速な対応が視力維持に重要です。
医療保険の引受に際しては、網膜格子状変性が網膜円孔や網膜剥離の原因となることから、特定障害不担保(眼)つまり眼球の不担保が必要です。
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