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浸透圧性脱髄症候群

重度の低ナトリウム血症(Na+<120mEq/L)で入院した患者の院内死亡率は、6%~10%との報告があります。脳浮腫を予防するためには、塩化ナトリウムを4~6mEq/L上げるだけで十分なのですが、重度の低ナトリウム血症の急激な修正は浸透圧性脱髄症候群や橋中心髄鞘崩壊症を引き起こします。


浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome; ODS)は、慢性の低ナトリウム(Na)血症治療時の合併症で、血清 Na 濃度が急速に上昇することによって発症し、ヒトにおいては脳内の橋でよく認められるため橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis; CPM)と呼ばれる脱髄疾患です。これが一旦発症するとしばしば致死的になる重篤な疾患で、有効な治療法は未だ存在しません。





臨床症状としては、意識障害、痙攣、パーキンソン病様運動障害などに加えて、重篤な症例では四肢麻痺、仮性球麻痺などが認められます。予防のための唯一の方法として、血清ナトリウムの補正速度を 24 時間で 10mEq/L 以内にするよう 緩徐な補正法が推奨されています。しかし実際にはその速度以下でも ODS は発症することもあります。


橋中心髄鞘崩壊症の基礎疾患として、アルコール依存症、熱傷、血液透析、肝移植や担癌状態などの病態が報告されています。アルコール依存症では、発症直前の飲酒量が非常に増加するときにCPMが発症することが多いようです。特に糖尿病患者では、アルコールを大量に摂取すると血糖コントロールは悪化し、血清浸透圧の変動をきたすことが推認されています。アルコール依存症の糖尿病患者が一番リスクが高いことになります。


CPMの診断は、頭部MRI検査によります。


重度の低ナトリウム血症患者に対する高張生理食塩水による治療は必要であり、重篤な神経学的症候を呈する患者には適応となります。その他の治療戦略としては、3%生理食塩水とデスモプレッシンを組み合わせた治療法が提唱されており、コントロール下に血清ナトリウムを上げることができます。



















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