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椎骨脳底動脈動脈瘤破裂

  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

椎骨脳底動脈動脈瘤破裂は、後方循環系に発生する脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血を指し、脳卒中の中でも重篤な転帰を取りやすい疾患である。脳底動脈や椎骨動脈は脳幹や小脳を灌流する重要血管であり、動脈瘤破裂に伴う出血は生命維持中枢への直接的影響をもたらすため、早期診断と迅速な治療介入が極めて重要である。特に脳底動脈瘤破裂は全脳動脈瘤の約5〜8%を占めるにすぎないが、致死率は高く、破裂急性期の死亡率は30〜50%に達するとされている。



疾患概念・原因

椎骨脳底動脈動脈瘤は、脳底動脈分岐部や椎骨動脈-後下小脳動脈(PICA)分岐部など、血行動態的ストレスが集中する部位に発生する。成因としては、動脈壁の中膜弾性線維の変性や内弾性板の断裂が関与し、慢性的な血流ストレスが瘤形成を促す。高血圧、喫煙、過度の飲酒、動脈硬化が主要な危険因子であり、また遺伝性要素として多発性嚢胞腎やEhlers-Danlos症候群などの結合組織疾患が背景に存在することもある。


疫学

全脳動脈瘤の約10〜15%が後方循環に位置し、そのうち椎骨脳底動脈領域は約半数を占める。男女比は女性にやや多く、発症年齢は50〜70歳代が中心である。破裂例の約3分の2は高血圧を有しており、また動脈瘤径が7 mmを超える場合、破裂リスクは急増する。


臨床症状

破裂時には典型的に突然の激しい頭痛(“人生最悪の頭痛”)で発症し、嘔吐、意識障害、項部硬直を伴う。脳幹や小脳への出血が加わると、呼吸不全、動眼神経麻痺、四肢麻痺などの神経症状が出現することもある。特に脳底動脈瘤破裂では、脳幹圧迫による昏睡状態や呼吸停止が早期に生じることがあり、救命困難となることが多い。未破裂例でも瘤の増大により脳幹圧迫や脳神経障害(複視、構音障害、嚥下障害)を呈することがある。


検査・診断

初期評価では頭部CTによりくも膜下出血の確認が最も重要である。破裂直後であれば高吸収域として描出される。CTで陰性の場合でも臨床的に疑われる際は腰椎穿刺により髄液中の血性変化を確認する。確定診断には脳血管造影(DSA)が金標準であり、動脈瘤の部位、形態、頸部構造、分枝との関係を詳細に評価できる。近年では3D-CTAやMRAによる非侵襲的画像評価も発達しており、救急現場での迅速な診断に寄与している。脳血管攣縮や再出血リスクを評価するため、入院後も経時的な画像フォローが推奨される。


診断基準と重症度分類

くも膜下出血の重症度は、Hunt & Kosnik分類やWorld Federation of Neurological Surgeons(WFNS)スコアが広く用いられ、手術適応や予後予測に活用される。またFisher分類によりCT上の出血量を評価し、血管攣縮リスクを推定する。椎骨脳底動脈瘤の場合、瘤の形状や分岐動脈の関与が手技選択に直結するため、3D再構築による形態解析が治療戦略立案の鍵となる。


治療

治療の原則は、再出血の防止と二次的脳障害(血管攣縮、水頭症、脳浮腫など)の予防である。日本脳卒中学会の「くも膜下出血治療ガイドライン2021」に準拠すると、急性期(発症後72時間以内)に動脈瘤の根治的治療を行うことが推奨されている。治療法は大きく開頭クリッピング術と血管内治療(コイル塞栓術)に分かれる。


開頭クリッピング術は動脈瘤頸部を金属クリップで閉鎖し、再出血を完全に防止できる根治的治療であるが、深部操作が必要な椎骨脳底系では手技的難易度が高く、手術侵襲も大きい。一方、血管内治療はカテーテルを用いて瘤内にプラチナコイルを充填し、血流を遮断する方法であり、近年はfirst-line治療として選択されることが増えている。特に高齢者、全身状態不良例、また脳幹近傍の深部瘤では血管内治療が安全で有効とされる。また、頸部の形態に応じてバルーンアシスト法やステントアシスト法が選択される。


治療後は、脳血管攣縮対策としてニモジピンやカルシウム拮抗薬の投与が行われ、必要に応じて高血圧・高容量・希釈療法(Triple H therapy)が実施される。ただし近年は循環管理を厳格化し、過剰輸液や高血圧誘導は控える方向にシフトしている。急性期の水頭症に対しては外減圧術や脳室ドレナージが適応となり、慢性期では脳室腹腔シャント術を要することがある。


予後

破裂椎骨脳底動脈瘤の予後は依然として不良であり、発症時重症度が最も大きな予後規定因子である。WFNS Grade IV〜Vの症例では死亡率が50%を超える。再出血は発症24時間以内に最も多く、未治療例では1か月以内に30〜40%に再出血を認めるため、早期治療が極めて重要である。治療後の長期生存例でも、脳幹虚血や小脳梗塞による神経後遺症が残存することが多いが、早期診断・低侵襲治療により機能予後の改善が期待されるようになっ

ている。




図表

表1. 椎骨脳底動脈瘤の主な発生部位と頻度

部位

発生頻度(%)

備考

椎骨動脈-PICA分岐部

約40

最も頻度が高い

脳底動脈先端部

約30

両側後大脳動脈分岐部に多い

脳底動脈幹部

約20

紡錘状動脈瘤が多い

椎骨動脈合流部

約10

血行動態的ストレスが強い


参考文献

  1. 日本脳卒中学会. くも膜下出血治療ガイドライン2021. 脳卒中 2021;43(Suppl):1–58.

  2. Lawton MT, et al. “Aneurysms of the vertebrobasilar circulation: surgical techniques, outcomes, and recent advances.” Neurosurgery. 2020;87(6):1151–1162.

  3. Wiebers DO, et al. “Unruptured intracranial aneurysms: natural history and management.” N Engl J Med. 2003;349:932–939.

  4. Brinjikji W, et al. “Endovascular treatment of posterior circulation aneurysms: a systematic review and meta-analysis.” AJNR Am J Neuroradiol. 2021;42(1):50–56.

  5. Etminan N, et al. “Update on the management of aneurysmal subarachnoid hemorrhage.” Lancet Neurol. 2023;22(1):60–72.



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