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多形腺腫

  • 3 日前
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多形腺腫(Pleomorphic Adenoma)は、唾液腺に発生する腫瘍の中で最も頻度が高い良性腫瘍であり、組織学的には上皮成分と間葉様成分が混在することから「混合腫瘍」とも呼ばれます。特に耳下腺に好発し、全唾液腺腫瘍の約60%を占めますが、顎下腺や小唾液腺(とくに口蓋)にも発生することがあります。耳下腺の腫瘍では約70〜80%が良性で、その大部分が多形腺腫です。発生部位の頻度は次のとおりです。


(1) 耳下腺:約80%

(2) 顎下腺:約10%

(3) 小唾液腺:約10%(特に硬口蓋)



発生の分子メカニズムとしては、PLAG1遺伝子やHMGA2遺伝子の過剰発現や再構成が報告されており、これらの遺伝子異常が細胞増殖や腫瘍形成に関与していると考えられています。疫学的には20〜50歳代に多く、やや女性に多い傾向があり、耳下腺に発生する場合が最も一般的です。 注)PLAG1(pleomorphic adenoma gene 1)遺伝子の過剰発現

HMGA2(High Mobility Group A2)遺伝子の再構成


臨床的には、ゆっくりと進行する無痛性の腫瘤として認められ、一般的に境界明瞭で可動性良好な腫瘤を形成します。圧痛や潰瘍形成を伴うことはまれであり、症状が乏しいために長期間放置されることもあります。しかし、放置すると約5〜10%の確率で悪性化する可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。


診断のためには、まず画像検査が行われ、超音波検査では境界明瞭な低エコー腫瘤として認められます。CTやMRIでは腫瘍の大きさや周囲組織との関係を把握できますが、特にMRIのT2強調像で高信号を示す所見は多形腺腫に特徴的です。また、穿刺吸引細胞診(FNA)は非侵襲的かつ診断精度が高いため、唾液腺腫瘍の診断において第一選択とされています。ただし、最終的な確定診断は外科的切除後の病理組織診断によって行われます。


治療の第一選択は外科的切除です。単純な摘出では被膜の破綻や不完全切除による再発のリスクが高いため、現在の診療ガイドラインでは、適切なマージンを確保した腺葉切除が推奨されています。たとえば、耳下腺の場合は顔面神経を温存しつつ浅葉切除術を行い、顎下腺では腺の全摘出が行われます。小唾液腺に生じた場合は、周囲粘膜を含めた切除が必要です。これらの方法により、再発を防ぎつつ良好な治療成績が得られます。


予後は非常に良好であり、完全切除が達成されれば5年生存率はほぼ100%です。しかし、不完全な手術による局所再発や、長期間放置された腫瘍の悪性転化(多形腺癌)には注意が必要です。再発例では腫瘍が多発性になったり境界が不明瞭になることが多く、再手術が困難になるケースもあります。また、悪性転化した場合の予後は著しく悪化し、5年生存率は50%以下とされます。そのため、多形腺腫に対しては、初回手術の段階で適切かつ確実な切除が極めて重要とされます。


(参考文献)

1.     Seifert G, Sobin LH. The World Health Organization's histological classification of salivary gland tumors. A commentary on the second edition. Cancer. 1992;70(2):379-385.

2.      Barnes L, Eveson JW, Reichart P, Sidransky D (eds). WHO Classification of Tumours. Pathology and Genetics of Head and Neck Tumours. IARC Press: Lyon, 2005.

3.      日本耳鼻咽喉科学会編. 唾液腺疾患の診療ガイドライン 2022年版. 金原出版.

4.      Speight PM, Barrett AW. Salivary gland tumours. Oral Dis. 2002;8(5):229–240.

5.      Eveson JW, Cawson RA. Tumours of the minor (accessory) salivary glands: a demographic study of 336 cases. J Oral Pathol.1985;14(6):500–509.




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