top of page

医学豆知識メルマガVol.200 腎不全

腎臓は、血液から老廃物や不要な電解質を濾過して尿を生成する臓器です。 急性腎不全とは数時間から数日の経過で腎機能の急激な低下を来たし、急速に体液恒常性維持が困難となった結果、高窒素血症、溢水、高カリウム血症、代謝性ア シドーシスが発生した状態をいい、多くは適切な治療によって回復します。 一方、数ケ月~数年かけて徐々に腎臓が低下するものを慢性腎不全といい最終的には腎臓が機能しなくなります。



分類

急性腎不全は、腎臓へ流れる血流が低下することによる腎前性腎不全、腎臓自体に異常がある腎性腎不全、腎臓の先の尿路に問題がある腎後性腎不全に分けられます。腎前性腎不全は、脱水や嘔吐、下痢、熱傷などによる体液量の低下、うっ血性心不全やショック状態などによる循環血液量の減少が原因となります。

腎性腎不全は、腎臓に悪影響を及ぼす薬物や造影剤、筋肉の融解によって生じるミオグロビンなどが腎臓の血管にダメージを与えたり、糸球体腎炎や腎動脈血栓など腎臓に生じる病気が原因となる事があります。

腎後性腎不全は、両側の尿管閉塞や、尿管結石、前立腺癌、前立腺肥大による膀胱や尿道の狭窄などによって尿を排出する通り道が閉塞されることが原因となります。

症状

老廃物の蓄積としての高窒素血症の結果として嘔気、嘔吐、食欲不振、下痢等の消化器症状や、意欲の低下、全身倦怠感、意識障害等の中枢神経症状が認められます。外傷や手術後に発症する急性腎不全は、腎不全単独ではなく、多臓器不全の一症状として出現するので、呼吸不全、肝不全、心不全、出血傾向等の症状も合併します。

診断

定義ではありませんが、一般的には次のいずれかに該当するものとされます。 血清クレアチニン値が2.0~2.5mg/dl以上へ急速に上昇したもの。ただし基礎に腎機能低下がある場合には、血清クレアチニン値が前値の50%以上、上昇したもの。

または、血清クレアチニン値が0.5mg/dl/day以上、BUNが10mg/dl/day以上の速度で上昇するものを一般的に急性腎不全としています。

検査

血清Cr値、血清BUN値の上昇が認められますが、腎前性か腎性かの区別のためには、尿浸透圧比、尿/血漿浸透圧、尿/血清Cr比、尿/血清BUN比、尿中Na濃度、1日の尿量等の尿所見の数値も必要です。その他、尿中β2ミクログロブリンの著増が認められます。超音波エコーは腎血流の低下に伴いエコーレベルが上昇します。また、尿管結石、腎結石、前立腺肥大等の腎後性の原因疾患の有無を調べます。

治療

いずれの場合でも、それぞれの、原因に対する治療を行います、脱水、出血等の循環血液量減少に対しては、適切な輸液や輸血を行い、心不全、ショック等に対してはカテコラミン等の昇圧薬、急速進行性糸球体腎炎、急性間質性腎炎に対しては、ステロイドを中心とした免疫療法、薬剤性の場合には、原因薬剤の中止です。尿路結石の除去や、腫瘍、前立腺肥大の場合は切除、尿管カテーテル挿入による閉塞の解除等が必要とされます。乏尿が続いたり、尿毒症による症状が認められる場合には、一定期間だけ透析をする場合もあります。

予後

患者全体の死亡率は50%近いという報告もありますが、これは腎不全が単独で発症したというよりは、多臓器不全などの疾病に併発した症状も含まれるため死亡率が高くなっています。一般的には、急性腎不全は適切な治療により回復する疾患と言われています。

引受査定のポイント

現症は死亡保険系も医療保険も延期でしょう。既往症は、死亡保険系は延期~ 保険料割増等の条件付での引受を考慮できますが、医療保険は、延期とした方がよいかもしれません。告知期間外の5年超の場合はいずれも引受可を考慮できるでしょう。

本メルマガの内容については、配信日現在の医療情報、医療事情及び医療環境等のもとで記載しており、将来的な約束をするものではありません。また、あくまでも一般的な内容であり、個々のケースや保険会社各社様によって基準は異なることをご承知おきください。2019年9月
bottom of page