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医学豆知識メルマガVol.217 SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は、近位尿細管においてグルコースの再吸収を阻害して尿糖排泄量を増加させることにより、インスリンに依存せずに血糖値を低下させる新規作用機序の経口糖尿病治療薬です。


SGLTは、「ナトリウム・グルコース共役輸送体」というタンパク質の一種です。体内でグルコース(ブドウ糖)やナトリウムを細胞内に取り込む役割を担っています。

SGLTの種類にはいくつかあり、体内のいろいろな場所に存在しています。 その中でSGLT2は腎臓の近位尿細管に特異的に発現し、原尿中のグルコースの再吸収の約90%を担っています。残り約10%はSGLT1が担っていますが、SGLT1は腎臓だけではなく、骨格筋や心筋、特に小腸粘膜に高発現しています。2型糖尿病患者では健常人に比べSGLT2の発現量が増加し、結果的にグルコースの再吸収量も亢進しています。


作用機序

SGLT2阻害薬はその名のとおり、SGLT2の働きを阻害する薬剤です。SGLT2の働きを阻害すると、近位尿細管でのグルコース再吸収が減り、その分だけ尿糖の排泄が増えます。その結果、高血糖が改善されます。

 

特徴

これまでの糖尿病治療薬は膵臓に作用し、最終的にはインスリンの分泌を促進することで血糖コントロールを改善するものでした。SGLT2阻害薬の大きな違いは、腎臓に作用する治療薬であるということ。膵β細胞を酷使するわけでもなく、インスリン分泌の有無を問わず、腎臓の機能そのものへの負担はありません。あくまでも、その作用は腎臓の近位尿細管内にとどまり、他の治療薬のメカニズムに影響を与えることもないため、組み合わせによってはより大きな効果を引き出すことが期待されています。服用で起きる体の変化として、体重の減少もあります。ほかの薬と併用しなければ低血糖を起こす危険性が低いことも特徴です。日本では2014年から使われるようになった新薬です。

 

メリット

 ・インスリン分泌に依存しない作用機序のため、低血糖のリスクが少ない

 ・体重減少効果 :体外にブドウ糖を排出する機序により体重減少効果を示す

 ・血圧低下作用 :浸透圧利尿作用により血圧低下につながる

 ・脂質改善効果 :尿糖排泄がカロリーロスをきたすことから体重減少、さらには

         血圧低下、脂質改善効果も認められる

 

使用に関する注意点

内服にあたり注意点がいくつかあります。

体内の水分が少なくなることにより、脱水症状を起こすことがあるので、服用中は適度な水分補給が大切です。また尿に糖分が含まれるようになり細菌が繁殖しやすくなるため、尿路・性器感染症などに注意が必要です。 

・体重減少は肥満でない人にも認められる(特に高齢者では注意が必要)

・作用から血糖コントロールが良好な人でも、尿糖は陽性になる

・腎機能が低下している人では効果が下がる

・腎不全や、透析を行っている人には使用できない

・尿量が増えるため、脱水が起こりやすい(特に高齢者では注意が必要)

・膀胱炎、尿道・膣の感染症などが起こることがある(とくに女性は注意が必要)

 

 

引受査定のポイント

SGLT2阻害薬は血液中の過剰な糖を尿として排出し血糖値を下げる薬なので、服用中は尿糖の意味が異なります。血糖値が下がっていても尿糖が多いので血糖コントロールの目安にはなりません。HbA1cや血糖値にて糖尿病のコントロール状態を判断します。

最近一部のSGLT2阻害薬が慢性心不全に対して適応となり、心不全患者に対する標準的治療薬の一つとして、その使用機会が増加しています。

また近年、糖尿病⾮合併CKDに対する腎保護効果が⽰され、糖尿病合併CKDのみならず糖尿病⾮合併CKDに対し、⼀部のSGLT2阻害薬が使⽤可能となったことにより、薬剤の適用疾患と告知内容を併せて判断する必要があるでしょう。

本メルマガの内容については、配信日現在の医療情報、医療事情及び医療環境等のもとで記載しており、将来的な約束をするものではありません。また、あくまでも一般的な内容であり、個々のケースや保険会社各社様によって基準は異なることをご承知おきください。2023年12月


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