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シャルコー・マリー・トゥース病

ニューロパチー(neuropahty)とは、全身に分布する末梢神経が障害されることで、手足のしびれ、筋力低下や筋委縮などのさまざまな症状を呈する疾患です。筋肉は運動神経からの刺激を受けないと廃用性萎縮を起こし細ります。末梢神経は、運動神経、感覚神経と自律神経の3つに分類されることから、遺伝が原因の遺伝性ニューロパチーは次の3つに分類されます。

  1. 遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN)

  2. 遺伝性運動性ニューロパチー(HMN)

  3. 遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN)

遺伝性運動感覚性ニューロパチーは、シャルコー・マリー・トゥース病として知られています。シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease; CMT) とは、最も頻度の高い遺伝性ニューロパチーで、その有病率は約10人/人口10万人と推定されています。 CMTは、一般的に四肢、とくに下肢遠位部の筋力低下と感覚障害を示す緩徐進行性の遺伝子異常による末梢神経疾患の総称です。下肢遠位部の筋委縮も出現することから、腓骨筋萎縮症との別名もあります。両下肢のこの筋委縮状態を逆シャンパンボトル様と表現されます。1886年にCharcot、Marie、Toothの3人によって報告されたことからこの病名が付されています。


筋委縮が起こる疾患では、筋肉自体の変性による筋ジストロフィー症と運動神経の障害による筋力低下や筋委縮を起こすニューロパチーがあります。確定診断には、これら疾患との鑑別診断が重要です。


CMTは、正中神経の運動神経の伝達速度(MNCV)を基準として次の3型に分けられます。

・脱髄型(CMT1/CMT4)  

・軸索型(CMT2)

・中間型(intermediate CMT)

CMT全体に共通する一般的な合併症としては、腰痛、便秘、足関節拘縮などが多く見られます。一般に、生命予後は正常とみられている。ほとんどの場合、本症は緩徐に進行するため、晩年に、進行した状態で車椅子が必要となることがある以外は、重度の障害をきたすことはないようです。よって車椅子を必要とする重症例以外は、生命保険加入は可能と考えます。査定は、症状と合併症の評価によります。


CMTの診断基準として、次の①から③があり、①②③の条件を満たすと診断確定(definite)されます。

①以下の臨床症状(のうち2項目)を満たす。

(ア)筋力低下・筋萎縮 

下肢優位の四肢遠位部の障害(凹足、扁平足、逆シャンペンボトル様の筋萎縮、手内筋萎縮、足趾骨間筋萎縮など)が典型的だが、まれに四肢近位部が優位に障害される場合もあります。症状は、基本的に左右対称性です。凹足(pes cavus)はほとんどのCMT患者でみられます。正中神経障害による猿手や尺骨神経障害による鷲手が見られることもあります。筋力低下の進行は緩徐であることから、これを自覚しない場合もあります。深部腱反射は減弱または消失します。

(イ)感覚障害

下肢優位の手袋・靴下型の障害が典型的であるが、感覚障害が目立たない場合もあります。症状は基本的に左右対称性です。

(ウ)家族歴があります。

(エ)他の疾病によらない自律神経障害、声帯麻痺、視力障害、錐体路障害、錐体外路障害などの合併を認める場合もあります。


②神経伝導検査の異常(のうち2項目)を満たす。

(ア)正中神経の運動神経伝導速度が38m/s以下    38m/s未満を脱髄型、38m/s超と早ければ軸索型、38m/s前後を混合型とします。

(イ)正中神経の運動神経複合活動電位の明らかな低下

(ウ)他の末梢神経の神経伝導検査で軸索障害または脱髄性障害を認める。

なお、脱髄が高度な場合、全被検神経で活動電位が導出できない場合もある。


③シャルコー・マリー・トゥース病に特有の遺伝子異常がある。

CMTの原因遺伝子は80以上が既に同定されています。なかにはHMNや遺伝性痙性対麻痺など他の神経疾患の表現型を呈する遺伝子も複数存在します。


重症度分類について、日常生活動作の評価をするBarthel Indexを用いて、85点以下を治療対象とする。CMTの治療には、理学療法、手術療法、薬物治療がある。治療薬の開発に関しては、次の3つが研究されています。未だ有効な治療薬は開発されていません。 (1)神経栄養因子 (2)プロゲステロン阻害薬 (3)クルクミン その他にロボットスーツ「医療用HAL®」を含むロボット工学の応用も進行中です。医療用下肢タイプロボットスーツHALの保険適用疾患の1つとなっています。


一般に、生命予後は正常と考えられています。ほとんどの場合、CMTは緩徐に進行するため、晩年に、進行した状態で車椅子が必要となることがある以外は、重度の障害をきたすことはありません。したがって高齢者で車椅子状態となっていなければ、生命保険の引受は可能かもしれません。








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