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医学豆知識メルマガVol.215 ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは発熱と口の中の粘膜にみられる水疱性の発疹を特徴とし、その大多数はエンテロウイルスやコクサッキーウイルスの感染によるものです。毎年5月頃から流行し始め、6~7月がピークとなるいわゆる「夏かぜ」の代表的疾患です。


年齢は4歳以下がほとんどで、1歳代がもっとも多いです。感染経路は接触感染を含む糞口感染と飛沫感染で、2~4日の潜伏期の後、突然の39~40℃の高熱に続いて咽頭の粘膜の発赤が目立つようになり、上あごの粘膜やのどの奥に直径1~2mmほどの小水疱が出現します。小水疱は破れて浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴うことがあります。


ヘルパンギーナは、大人が罹患すると子どもと同じく高熱や口腔粘膜の小水疱などの症状が現れます。ただし、子どもと比べて症状が強く、高熱や非常に強い咽頭痛のほか、筋肉痛や頭痛、関節痛が現れる場合があります。また、症状が現れている期間が長く、重症化しやすい点も特徴です。


原因・感染経路

主にコクサッキーA群ウイルス(Coxsackie virus GroupA)を原因とします。ヘルパンギーナにかかった人の咳やくしゃみ、つばなどの飛沫に含まれるウイルスによって感染します(飛沫感染)。また、水疱の内容物や便に排出されたウイルスが手などを介し、口や眼などの粘膜に入って感染します(経口・接触感染)。

症状

2~4日の潜伏期の後、突然の高熱、咽頭痛や咽頭発赤を呈し、口腔内に水疱や発赤が現れます。水疱は破れて痛みも伴います。2〜4日で解熱し、1週間程度で熱も水疱もひくケースがほとんどです。高熱による倦怠感や口腔内の痛みなどから、食事や水分を十分にとれず、脱水になることもあります。

合併症としては、熱に伴う熱性けいれんと、まれに無菌性髄膜炎や心筋炎が生じることがありますが、ほとんどは予後良好です。症状が強い急性期にもっともウイルスが排泄され感染力が強いですが、回復後にも2~4週間の長期にわたって便からウイルスが検出されることがあります。

治療と予防

特別な治療法はなく、症状に応じた対症療法が行われます。ウイルス性の感染症のため、通常の感冒と同様に抗菌薬は効果がありません。通常は対症療法のみで、発熱や頭痛、口の中の水疱の疼痛などに対して解熱・鎮痛剤を用いることがあります。脱水に対する治療が必要なこともあります。口の中に水疱ができ食事がとり難いため、柔らかく薄味の食事を工夫し、水分摂取を心がけ、安静と栄養に気をつけることが大切です。

特別な予防法はなく、感染している人との密接な接触を避けることや、流行時にうがいや手指の消毒を励行することが大切です。

診断

通常は、症状による診断がなされますが、検査診断は、病原体の検出によります。確定診断には、患者の口腔内拭い液、特に水疱内容を含んだ材料、糞便、髄膜炎を合併した例では髄液などを検査材料としてウイルス分離を行うか、あるいはウイルス抗原を検出します。鑑別診断として、単純ヘルペスウイルス1型による歯肉口内炎(口腔病変は歯齦・舌に顕著)、手足口病(ヘルパンギーナの場合よりも口腔内前方に水疱疹が見られ、手や足にも水疱疹がある)、アフタ性口内炎(発熱を伴わず、口腔内所見は舌および頬部粘膜に多い)などがあげられます。

引受査定のポイント

現症の場合は、重症化したり、合併症を引き起こす可能性もあるため、引受延期とし、1週間程度で症状が消失・完治している場合は、医療保険・生命保険ともに無条件でのお引受が可能でしょう。


【参考】


本メルマガの内容については、配信日現在の医療情報、医療事情及び医療環境等のもとで記載しており、将来的な約束をするものではありません。また、あくまでも一般的な内容であり、個々のケースや保険会社各社様によって基準は異なることをご承知おきください。2023年9月


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