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胆嚢腺筋腫症

胆嚢は、沈黙の臓器である肝臓の直下にある袋状の器官で、肝臓で生成される胆汁を貯留・濃縮して総胆管経由して十二指腸へと放出する働きがあります。胆汁は黄緑職の液体で、胆汁酸塩、胆汁色素(ビリルビン)、コレステロール、リン脂質と多くの電解質を含みます。十二指腸腔に放出された胆汁中の胆汁酸塩は、大きな脂肪滴を小さな粒子に変えて消化酵素との接触l面積を増やすことで、腸管からの脂肪の消化吸収を助けます。肝臓は、1日1Lの胆汁を作っています。脂肪を含む食物塊が十二指腸に入ると、ホルモンの刺激で胆嚢が収縮します。さらに胆汁は、肝臓の持つ解毒l作用と協力して老廃物を体外へ排泄する働きもあります。


胆嚢は、肝臓からの胆汁を貯留し濃縮する過程で、いくつかの疾患を合併することがあります。


胆嚢腺筋腫症(gallbladder adenomyomatosis)とは、肉眼的に胆嚢壁の肥厚性病変であり、組織学的にはRAS(Rokitansky-Aschoff sinus)の増殖とその周囲の筋・線維組織の増生から構成される良性疾患と考えられてきた。腺筋腫症は、肉眼的形態から次の3つに分類されます。


1. 分節型(segmental type)

2. 底部型(fundal type)

3. びまん型(diffuse type)


分節型は、胆嚢頚部、体部に全周性の壁肥厚を来し、内腔が狭小化します。底部型は、胆嚢底部を中心に限局性の腫瘤を呈するもので、その表面中心部に限局性腫瘤を呈します。びまん型は、胆嚢全体の壁がRASの増生のために、びまん性に肥厚したものです。


胆嚢腺筋腫症は、腹部超音波検査などにより偶然に見つかることが多く、通常は無症状に経過します。しかし胆嚢炎や結石が合併した場合、腹部膨満、悪心、消化不良など消化管不定愁訴と上腹部痛ないし右季肋部痛が起こることがあります。これらは、胆嚢炎や結石による症状です。


腹部超音波検査で、胆嚢壁の肥厚は4mm以上をいう。肥厚した胆嚢壁には、RASによる小嚢胞が無エコー領域として見られ、高エコー像はコメット様エコー(comet-like echo)と呼ばれます。なお、胆嚢腺筋腫症の画像診断基準としては、以下の①と②を認める場合をいいます。


①腹部 US(EUS)または造影 CT で、  びまん性あるいは限局性に壁厚 4mm 以上の壁肥厚を認める。

②壁肥厚に一致して以下のいずれかを認める。

a)拡張した RAS(以下のいずれか)

腹部 US(EUS)での小嚢胞様構造

MRI(MRCP)での 真珠ネックレスサイン(pearl necklace sign)

b)壁内結石(以下のいずれか)

腹部 US(EUS)でのコメット様エコー

CT での壁内石灰化



胆嚢腺筋腫症では、胆嚢炎や胆嚢結石の合併があった場合、それらの治療を行います。一般に有症状の場合には、腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われます。異所性の胆嚢腺筋腫症では、胆道を閉塞して黄疸を起こすことがあり、腫瘍切除術が行われます。


胆嚢腺筋腫症の胆嚢癌合併率は、分節型で6.5%、これ以外(底部型、びまん型)で 3.5%との報告があり、胆嚢腺筋腫症の分節型で胆嚢癌の合併が多く見られることから、特に60歳以上の高齢者で十分な経過観察をすることが重要です。また胆嚢腺筋腫症と胆嚢結石との関連も報告されています。胆石は底部側内腔に存在することが多いです。というのも底部側内腔の胆汁うっ滞とその結果として胆汁組成の変化が起こるからです。














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