甲状腺クリーゼ

バセドウ病やグレーブス病として知られる甲状腺機能亢進症は、良く知られた疾患の1つです。甲状腺の活動が亢進し、血中に甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるとこにより、全身の新陳代謝が促進されます。甲状腺ホルモンの分泌がさらに過剰となり、生命の危機となり緊急の入院治療を必要とする病態を甲状腺クリーゼといいます。




甲状腺クリーゼ(Thyrotoxic storm or crisis)とは、甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し、これに何らかの強いストレスが加わった時に、甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果、生命の危機に直面した緊急治療を要する病態である。


血液検査で甲状腺中毒の存在を証明します。すなわち甲状腺ホルモンである遊離T3またはT4の少なくともいずれか一方が高値であることです。臨床症状としては次のものが挙げられます。

  1. 中枢神経症状

  2. 38度C以上の発熱

  3. 130回/分以上の頻脈

  4. 心不全症状

  5. 消化器症状

血中甲状腺ホルモンの高値が証明され、(a)上記の中枢神経症状と他の症状項目1つ以上に該当、または(b)中枢神経症状以外の症状項目3つ以上に該当した場合に確定診断(確実例)となります。その他は疑い例となります。また、血液検査実施前でも甲状腺疾患の既往、眼球突出、甲状腺腫の存在があり確実例の(a)(b)を満たす場合も疑い例です。


ただし、上記の臨床症状が、甲状腺基礎疾患以外の原因となる疾患が明らかである発熱、意識障害、心不全、肝障害を呈する場合を除きます。つまり未治療またはコントロール不良の甲状腺機能亢進症があり、それが急性増悪して神経症状などを呈した病態ということです。


神経症状には、不穏、せん妄、精神異常、傾眠、けいれん、昏睡を含みます。昏睡は、Japan Coma Scale (JCS)1以上またはGlasgow Coma Scale (GCS)14以下です。頻脈には心房細動などの頻脈性不整脈を含みます。心不全は、肺水腫、肺野の半分を占める湿性ラ音、心原性ショックなどの重度な症状を呈するもので、NewYork Heart Association (NYHA)分類4度またはKillip分類III度以上です。消化器症状としては、吐き気・嘔吐、下痢、黄疸などが見られます。


さらに甲状腺クリーゼの誘因には、抗甲状腺剤の服用不規則や中断、甲状腺手術、甲状腺アイソトープ治療、過度の甲状腺触診や細胞診、甲状腺ホルモン剤の大量服用などがあります。したがって甲状腺機能亢進症の治療経過を注意して見守る必要があり、特に甲状腺機能亢進症の治療開始間もない時期は甲状腺クリーゼが起こりやすいと考えられます。


よって以上のことから、甲状腺クリーゼの入院がある場合、新契約の引受は困難と考えます。同様に甲状腺機能亢進症の治療開始後6カ月間は、PPとしておくことが望ましいでしょう。