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医学豆知識メルマガVol.209 黄斑前膜

目の前の景色は、角膜や水晶体(レンズに相当)を通過したあと、網膜(フィルムに相当)に映し出されて自覚されます。網膜の中でも、特に物を見る視細胞が沢山集まっている一番重要な中心部分を中心窩といい、それを囲む様な1~2mmの部分を黄斑部といいます。黄斑前膜とは、加齢や、網膜剥離、網膜裂孔の治療後やその他の原因により、黄斑部の網膜の手前に薄く透明なセロハンの様な膜が出来るため、ものが歪んで見えたり(変視症)、大きく見えたり(大視症)、視力が低下する疾患で、黄斑上膜ともいわれます。


白内障ほどの高率ではありませんが、黄斑前膜も網膜疾患の中では最も多い病気のひとつで、40才以上のおよそ20人に1人がなるといわれます。なかでも50才~70才位の女性に多い傾向にあり、緑内障に合併することもあります。(日本眼科医会HPより)



原因

黄斑前膜の約9割は加齢による後部硝子体剥離が起きる過程で、後壁の一部に穴があき、黄斑に残存した硝子体の皮質を骨格にして新たな細胞が増殖してきたり、眼球内の物質が付着して少しづつ膜が形成されることが原因です。なかには、網膜裂孔やぶどう膜炎等の他の疾患に続発する黄斑前膜もあり、進行が早く重症化しやすいので注意が必要です。

症状

軽症の場合は、黄斑部網膜の前に透明なセロハン上の膜が張っているだけなので自覚症状はありません。進行すると膜が厚くなり収縮してくるため黄斑前膜にしわが寄り、その後ろの網膜もしわにより凹凸になるので景色が歪んでみえたり(変視、歪視)、大きく見えたり(大視)、かすんで見える(霧視)等の症状が生じます。更に進行すると歪みが増強し、視力も低下してきます。


検査・診断

裸眼視力、矯正視力の測定と共に、歪みの程度を知るためにアムスラ―チャートという方眼紙の様なものを見る検査をします。眼底検査では黄斑部に半透明の膜が認められ、眼底写真にも写ります。黄斑前膜や、その下の黄斑部網膜の状態を詳しく知るためには、赤外光で網膜をスキャンし、網膜の断面像をミクロン単位で測定するOCT(光干渉断層計)撮影を行います。


鑑別疾患

黄斑円孔、加齢黄斑変性症、裂孔原性網膜剥離、飛蚊症、白内障、緑内障、糖尿病性黄斑浮腫等が鑑別としてあげられます。


治療

放置して自然に黄斑前膜が良くなるのは5%くらいで、それ以外はゆっくり進行していきます。物が歪んで、視力が低下して日常生活に不自由を感じるようになったら、手術の適用となります。手術で、網膜前膜の前にある硝子体を切除した後、黄斑前膜をピンセットでつかんでゆっくり網膜から剥がします。硝子体手術の後には白内障が進行しやすくなるともいわれており、同時に白内障手術を行うこともあります。


術中の合併症としては、硝子体を切除している時に、網膜の弱い所(格子状変性等)が引っ張られて破れる網膜裂孔新生や、急激な眼内の出血である駆出性出血があります。まれな術後合併症としては、創口に残った硝子体がはまり込んで網膜を引っ張って孔を開ける裂孔原性網膜剥離や術後眼内炎があります。


引受査定のポイント

現症については死亡保険は視力障害について不担保、医療保険は視力障害+部位不担保等の条件付での引受を考慮します。既往症については死亡保険は視力障害について不担保~標準体、医療保険は視力障害+部位不担保(短期間)等の条件付での引受を考慮できるでしょう。

本メルマガの内容については、配信日現在の医療情報、医療事情及び医療環境等のもとで記載しており、将来的な約束をするものではありません。また、あくまでも一般的な内容であり、個々のケースや保険会社各社様によって基準は異なることをご承知おきください。2020年11月


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