top of page

医学豆知識メルマガVol.201 変形性膝関節症

膝関節を構成する大腿骨と脛骨の関節表面には、厚さ3mm程の軟骨が存在し、摩擦を防ぎ、関節のスムーズな動きを実現しています。変形性膝関節症は、加齢、肥満、遺伝、外傷等の原因で軟骨が摩耗し、膝に強い疼痛が生じる疾患です。国内では約1,000万人の患者がいると言われており、整形外科的な有病率は腰痛に次いで第2位です。男女比は1:4で女性に多く、40才以降の発症が多いです。関節自体に異常がなく、加齢や肥満等で徐々に負荷がかかってしまい発症する一次性変形症と、病気や事故等が原因の二次性変形症による分類があります。また、変形のタイプでの分類「O脚(内反)」「X脚(外反)」もあります。O脚は日本人に多く、X脚は欧米人に多いとされています。



症状

様々な要因によって、膝関節の軟骨が磨り減って、周辺の組織が炎症を起こして痛みが生じます。軟骨には血管も神経もないため痛みを感じないのですが、周辺の軟部組織には痛みの神経が多く通っているため痛みを感じやすくなります。

初期には軽度のズキズキとした痛みが生じますがすぐに収まります。中期では痛みがすぐに治まらなくなり、しゃがみ込みや正座等が出来なくなります。

末期では歩くたびに痛みが生じ、重度のO脚変形や膝関節屈曲拘縮が生じ、日常生活に悪影響を及ぼします。悪化すると膝に水が溜まる関節水腫を認めます。




診断・重症度

診断は一般的にX線所見で行われ、関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化、骨棘、骨嚢胞、関節面不適合等を見て診断します。重症度分類は、Kellgren-Lawrence分類(0~4)が一般的に用いられます。0は正常で1は骨棘形成または軟骨下骨の硬化像が認められますが、関節裂隙の狭小化はまだ見られません。

2は関節裂隙の狭小化は見られますが、1/2以上残存しており、この時点で変形性膝関節症と診断されるのが一般的です。

3は関節裂隙が1/2未満で4は関節裂隙がほぼ認められず、日常生活に支障をきたし、手術適応を考慮する時期です。


検査

X線検査以外には、MRI検査で関節軟骨、半月板や骨内の病変の有無を調べます。血液検査では、関節リウマチで上昇するCRP上昇やリウマチ因子が認められません。関節液検査では、黄色透明の関節液が排出され、関節リウマチの黄色混濁した関節液とは鑑別できます。


治療

一度すり減った関節軟骨はもとの形に修復されることは困難で、むしろ加齢と共に悪化するので、痛みを取り、膝の運動機能を改善することが必要となります。非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)の内服や、外用、塗り薬、テープ剤、坐剤の使用や、ヒアルロン酸やステロイドの関節内注入が一般的です。物理療法として、温熱療法、電気刺激療法やレーザーや遠赤外線を照射する光線療法がありますが、改善がない場合には最終的には手術となります。


軽度~中等度であれば、関節鏡視下郭清術(デブリードマン)で改善しますが、重症の場合には、高位脛骨骨切り術や、人工膝関節置換術が一般的です。なお、変形性膝関節症の再生医療としては、血液を活用するPRP療法や、脂肪を活用する脂肪幹細胞治療、脂肪由来幹細胞を増殖させる培養幹細胞治療等がありますが、現時点では保険適応外で自由診療となっています。逆に、変形性膝関節症は適応外ですが、外傷性軟骨欠損症や、離断性骨軟骨炎の場合、一定の基準を満たせば、自家培養軟骨移植術が保険適応となっています。


予後(耐久性)

高位脛骨骨切り術の場合には10年以上経過すると痛みが再発して、人工膝関節置換術を行う可能性があります。人工膝関節置換術の場合の耐久性は術後10年で約95%、術後20年で90%と長期にわたり良好なので、再手術は人工関節と骨のゆるみや感染による場合が多いです。


引受査定のポイント

現症・既往症共に医療保険については長期間の部位不担保等の条件つきでの引受を考慮したほうがよいでしょう。死亡保険については、現症・既往症共に標準体での引受で問題ないでしょう。

本メルマガの内容については、配信日現在の医療情報、医療事情及び医療環境等のもとで記載しており、将来的な約束をするものではありません。また、あくまでも一般的な内容であり、個々のケースや保険会社各社様によって基準は異なることをご承知おきください。2019年9月
bottom of page