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シェーグレン症候群

疾患概念・原因

 シェーグレン症候群(Sjogren syndrome)とは、自己免疫疾患の一つで、リンパ球浸潤を伴う慢性炎症により、涙腺・唾液腺などの分泌量が低下し、乾燥状態を生じる症候群です。男女比は1:9で女性に多く40~60歳の中年女性に好発します。シェーグレン症候群は、臨床的に重要な疾患ですが見逃されやすく、医師による積極的な問診により初めて乾燥症状に気付くことが多いと言われています。





疫学・症状・経過

 日本のシェーグレン症候群の推定患者数は10万人以上と考えられています。40~60歳の女性に好発し、症状としては口や鼻が乾き、物が飲み込みにくく、虫歯が出来やすくなります。また、眼の異物感、発赤充血や疲れ目の症状が出ます。3分の1の症例で唾液腺・涙腺の腫脹もみられます。移動性かつ多発性の関節痛があり、貧血、血沈、γグロブリンの上昇、白血球の減少、リウマトイド因子(+)、抗SS-A抗体・抗SS-B抗体(+)がみられるとき、シェーグレン症候群を疑います。


検査・診断

シェーグレン症候群の検査としては、唾液腺造影(耳下腺造影)、唾液腺シンチグラム、涙液分泌テストであるシルマー(Schirmer)試験やローズベンガル(Rose Bengal)試験を行います。シルマー試験は濾紙の先端を折り曲げ、下結膜嚢にかけ5分後に涙で濡れた部分の長さを測定します。この疾患では乾燥症状から短くなります。また、ローズベンガル試験とはローズベンガル染色液を瞳にたらし、角膜や球結膜のびらん部分を確認します。陽性であれば赤く染まります。導管周囲のリンパ球浸潤があるか否かを口唇腺や唾液腺の生検を行い確認します。


シェーグレン症候群では、腎臓での尿の酸性化障害による遠位尿細管性アシドーシス、間質性腎炎や原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、橋本病(慢性甲状腺炎)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症などの自己免疫疾患を合併することもあります。以下に、厚生省改訂によるシェーグレン症候群診断基準を示す。


シェーグレン症候群診断基準(1999厚生省改訂基準) 1.生検病理組織所見で次のいずれかの陽性所見を認めること  a)口唇腺組織で4 mm2あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上  b)涙腺組織で4 mm2あたり1focus(導管周囲に50個以上 のリンパ球浸潤)以上

2.口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること  a)唾液腺造影でStage 1(直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見  b)唾液腺分泌量(ガム試験 10ml以下/10分、サクソン試験 2g 以下/2分)かつ唾液腺

   シンチグラフィーで機能低下の所見

3.眼科所見でいずれかの陽性所見を認めること  a)シャーマー試験で 5mm以下/5分、ローズベンガル試験スコア3以上  b)シャーマー試験で 5mm以下/5分、蛍光色素試験陽性

4.血清試験で次のいずれかの陽性所見を認めること  a)抗SS-A抗体陽性  b)抗SS-B抗体陽性 以上の4項目中2項目以上を満たせばシェーグレン症候群と確定診断する



治療・予後

 シェーグレン症候群の治療は、対症療法が主体となります。乾燥症状には人工涙液点眼、口内乾燥には水分、外分泌腺機能促進薬を投与します。発熱、関節症状、筋痛などが主体の場合には、非ステロイド系抗炎症薬の投与を行います。但し、非ステロイド系抗炎症薬の有効性が低い全身症状に対しては、ステロイドを使用します。一方、合併する膠原病などに対する治療を行います。

 シェーグレン症候群の5%に悪性リンパ腫を合併すると言われてます。ほとんどが非ホジキンリンパ腫で、B細胞由来です。特に耳下腺の腫脹、紫斑、低C4値、脾腫がある場合には悪性リンパ腫合併の危険があります。


査定のポイント

 合併症状が無い場合には、生命保険、医療保険ともにお引受が可能でしょう。合併症状がある場合には、その合併症により判断します。他の膠原病などを合併している場合には保険加入は困難です。悪性リンパ腫の合併懸念がある場合には、がん保険を引受不可としておくのが良いと思います。






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