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家族性地中海熱

地中海(Mediterranean sea)と言えば、地中海式ダイエットなるものが一時期流行したように記憶しています。地中海食の主食は、精製を行っていない全粒粉などの穀物でつくられたパンやパスタです。精製を行っていない穀物も炭水化物には変わらないのですが、精製を行っている白米などと比べ、血糖値が上昇しにくいという特徴があります。地中海式食事様式は、 全粒の穀物の他、緑黄色野菜、果物、豆類・ナッツ、きのこ類を多く食べ、赤肉の摂取は少量で魚介類が多く、油はオリーブオイル主体といった点が特徴で、心血管疾患や糖尿病、癌等の予防になることが知られています。





さて、地中海沿岸の地域に多い遺伝性の自己炎症性疾患の1つに家族性地中海熱があります。家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever; FMF)は、自己炎症性疾患の1つで、発作性の発熱や随伴症状として漿膜炎による激しい疼痛を特徴とする病態です。炎症経路のひとつであるインフラマソームの働きを抑えるパイリンの異常で発症します。近年、MEFV遺伝子が疾患関連遺伝子として知られるようになり、遺伝子診断が可能となっています。日本でも報告例が増加しています。


FMF典型例では突然高熱を認め、半日から3日間持続します。発熱間隔は、4週間毎が多いようです。随伴症状として漿膜炎による激しい腹痛や胸背部痛を訴えます。胸痛によって呼吸が浅くなります。また、関節炎や丹毒様皮疹を伴うことがあります。非典型例は、発熱期間が1~2週間のことが多く、上肢の関節症状などを伴いやすいです。検査所見は、発作時にCRP、血清アミロイドAの著明高値を認め、間歇期にこれらは劇的に陰性化するのが特徴です。


(診断基準)

以下の臨床所見とMEFV遺伝子解析にて、FMF診断を行います。


 1.臨床所見

 ①    必須項目

 12時間から72時間続く38度以上の発熱を3回以上繰り返す。発熱時には、CRPや血清アミロイドA(SAA)などの炎症検査所見の著明な上昇を認める。発作間歇期にはこれらが消失する。


 ②    補助項目

 ⅰ)発熱時の随伴症状として、以下のいずれかを認める。

 a.非限局性の腹膜炎による腹痛

  b.胸膜炎による胸背部痛

  c.関節炎

  d.心膜炎

  e.精巣漿膜炎

  f.髄膜炎による頭痛


 ⅱ)コルヒチンの予防内服によって発作が消失あるいは軽減する。


2.MEFV遺伝子解析

 1)臨床所見で必須項目と、補助項目のいずれか1項目以上を認める場合に、   臨床的にFMF典型例と診断する。


 2)繰り返す発熱のみ、あるいは補助項目のどれか1項目以上を有するなど、非典型的症状を示す症例については、MEFV遺伝子の解析を行い、以下の場合にFMFあるいはFMF非典型例と診断する。

     a)  Exon10の変異(M694I、M680I、M694V、V726A)(ヘテロの変異を含む)    を認めた場合には、FMFと診断する。

     b) Exon10以外の変異(E84K、E148Q、L110P-E148Q、P369S-R408Q、R202Q、     G304R、S503C)(ヘテロの変異を含む)を認め、コルヒチンの診断的投与で    反応があった場合には、FMF非典型例とする。

     c) 変異がないが、コルヒチンの診断的投与で反応があった場合には、    FMF非典型例とする。


FMFで、発熱発作を年4回以上を認めるもの、コルヒチン治療が無効なもの、アミロイドーシスを合併したものなどは重症例となります。重症例は保険加入が困難かもしれません。













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