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強皮症

疾患概念・原因

 全身性の結合組織病変で、血管障害を中心に展開される炎症性・線維性変化を主体とする疾患です。手指から始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの内臓諸臓器の病変を伴います。強皮症の病因は不明で、中年女性に多く、小児にはまれです。全身性疾患であることから全身性強皮症(systemic sclerosis; SSc)と呼ばれます。なお、限局性強皮症は、皮膚のみの病気で、内臓を侵さない全く別の軽症疾患です。





疫学・症状・経過

 男女比は1:12で30~50歳台の女性に多くみられますが、70歳以降の高齢者にも発症することがあります。全身性強皮症の患者数は2万人と推定されています。

 初発症状としてレイノー現象と手と皮膚の浮腫性硬化、関節痛が見られます。続いて皮膚色素沈着・脱失(メラニン色素がなくなり皮膚が白くなること。)、仮面様顔貌(顔面の皮膚硬化により鼻が尖り、口周辺には放射状のしわができ、口がすぼまります。表情も乏しくなります。)、舌小帯短縮、末節骨溶解、多発性関節痛とこわばりがみられます。消化器症状として嚥下障害や逆流性食道炎、吸収不良症候群がみられ、強皮症腎と呼ばれる腎症状である高レニン性悪性高血圧などをきたします。


検査・診断

 手指X増線像で、手指末端骨の骨吸収像、皮下石灰化、消化管造影で、下部食道の拡張、蠕動運動低下像、胸部X線像で、肺線維症(下肺野線状網状陰影)、心肥大がみられ、呼吸機能検査で%VCが80%以下の拘束性障害、肺拡散能を示すDLCOの低下、抗Scl-70抗体(+)が見られた時は、全身性強皮症を疑います。確定診断には皮膚(筋)生検を行います。皮膚の表層の萎縮と真皮全層の膠原病線維増生もみられます。以下に、皮膚生検を必要としない米国リウマチ協会の基準に準じた「全身性強皮症診断基準2003」を示す。


全身性強皮症診断基準2003

大基準

 両側性の手指あるいは足趾を越える皮膚硬化※

小基準

 1)手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化

 2)手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは手指の萎縮※※

3)両側性肺基底部の線維症

 4)抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体または抗セントロメア抗体陽性

大基準、あるいは小基準1)及び2)~4)の1項目以上を満たせば全身性強皮症と診断

※限局性強皮症(いわゆるモルフィア)を除外する

※※手指の循環障害によるもので、外傷などによるものを除く


治療・予後

 強皮症の治療は、すべて対症療法となります。その意味では日常生活指導が非常に大切といえます。基本療法として手の拘縮を防ぐため温熱療法やマッサージを行います。薬物療法として、皮膚硬化や肺線維症などの線維性病変にはD-ペニシラミン、レイノー現象、皮膚潰瘍、心筋病変などの血管病変にはCa拮抗薬を投与します。難治性潰瘍や肺高血圧症にはプロスタグランジンが第一次選択薬となります。関節炎などの炎症性病変や四肢末端の浮腫には非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドを用います。

 発症から5~6年経過すると皮膚症状は自然に良くなりますが、内臓病変は元に戻りません。そのため、内臓病変にならないために早期の治療開始が必要です。


査定のポイント

 生命保険は特別条件、医療保険も特別条件などの条件が必要でしょう。なお、限局性強皮症は引受可です。



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