高血圧が脳梗塞と脳内出血の主な危険因子であることは周知の事実です。特に生活習慣病の糖尿病が加われば、リスクは増大します。米国ミネソタ州ロチェスター郡では高血圧の有病率の低下が報告されています。この減少は高齢者で顕著であり、特に女性で顕著です。医療記録からの証拠によると、この一般母集団において高血圧がより良く認識され、良好に血圧がコントロールされているのでしょう。脳卒中発生率の低下に降圧剤治療が寄与していることを示唆する証拠があるようです。
「脳卒中再発」とは、脳梗塞または脳内出血またはくも膜下出血が、初回脳卒中の安定化後に随時発生し、同じ基準を満たすものをいいます。一過性脳虚血発作(TIA)は、再発とは考えなかったようです。脳卒中再発(脳梗塞または脳出血後)の正味確率の生命表法による推定のために、脳卒中再発以外の原因で死亡した場合には、観察下の標本集団から患者を離脱させました。1950~1959年、1960~1969年、及び1970~1979年のそれぞれの年齢及び性別適合集団について、3年周期の再発脳卒中発生率を、ロチェスターの予定脳卒中発生率と比較した。ロチェスターの平均人口は1950~1954年が29,873人、1975~1979年が57,033人であった。65歳以上人口に占める割合は、この2期間で8.8%から10.5%に増加しました。
この母集団に基づく研究は、ミネソタ州ロチェスターの住民1680例の脳卒中発症例により、脳卒中の再発および死亡に関する長期予後を明らかにしています。第2期と第3期の間には、長期生存率が増加する傾向がありました。拡張期血圧(DBP)と死亡指数(実測死亡率/予定死亡率)との間には直接的な関係があるように思われます。これは、血圧が低かった脳卒中患者が、血圧が高かった患者より転帰が良好であったことを示した唯一の証拠です。脳卒中後のDBPのコントロールを目的とした治療が死亡指数に何らかの影響を及ぼすことを示すことはできません。また収縮期血圧(SBP)と死亡指数との間に一貫した関係を見出せませんでした。
脳梗塞後の全累積脳卒中再発率は、10年間で3%/年未満でしたが、後年よりも早期の方がやや高い傾向にありました。観察期間1年、5年、10年の男女の再発率に有意差はなかったようです。これは、脳梗塞の男性718人と女性828人に関する観察結果を表しています。
論文によると、脳卒中の発症後の死亡指数は、発症後3年間は非常に高く、死亡指数が標準体の100%(+0)に近づくのは初回の脳卒中発症後6年超経過してからという証拠が得られました。したがって脳卒中発症前DBPが95mmHg未満であれば、脳卒中後6年超から標準体引受可ということになります。ただし、神経学的後遺症がある場合には、後遺障害の評価を加点する必要がありますね。
注)Mortality ratioが1のときが、標準体の総死亡指数100に相当。
(参考)
Irene Meissner, et al., ”Hypertension Management and Stroke Recurrence in a Community" Stroke 1988; 19:459-463
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