現在の社会保険制度では、脳血管疾患の急性期から回復期のリハビリテーションとして発症から約半年間に集中的なリハビリテーションを行う仕組みとなっている。この時期は、損傷された脳が最も変化する時期ではある。脳血管疾患では特に発症から3ヶ月~6ヶ月の自然回復が著しい。しかし高次機能障害の場合は、数年かかって改善する場合があるため、普通保険約款等で症状固定を判定する180日間では十分ではない。
高次脳機能障害とは、一般に「外傷性脳損傷、脳血管障害などにより脳損傷を受け、その後遺症などとして生じた記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を主たる要因として、日常生活及び社会生活への適応に困難を有する病態」をいう。厚生労働省の診断基準は次のとおりである。
高次脳機能障害の診断基準
Ⅰ.主要症状等
1.脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
2.現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、
遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。
Ⅱ.検査所見
MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認 されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。
Ⅲ.除外項目
1.脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが
上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。
2.診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
3.先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。
Ⅳ.診断
1.Ⅰ〜Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
2.高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の
急性期症状を脱した後において行う。
3.神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。
ICD-10で高次機能障害診断基準の対象となる疾患群を見ると以下のとおりである。
F04 器質性健忘症候群,アルコールその他の精神作用物質によらないもの
F06 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害
F07 脳の疾患,損傷及び機能不全による人格及び行動の障害
高次脳機能障害は、「日常生活及び社会生活への適応に困難を有する病態」であるが、これを具体的に定義するのも難しい。たとえば、高次脳機能障害のある者が「日常生活への適応に困難を有する」とはどういう状態であるのか。記憶障害があれば、頻繁に物の置き場所を忘れ探し回ることになり円滑に日常生活が送れないといったところだろうか。新しいできごとが覚えられないため、約束を忘れてしまう。同じことを繰り返し質問し相手を困らせてしまう。こんな記憶障害があったとしても、日常生活への適応に困難がなければ高次機能障害ではないということだろうか。
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