甲状腺腫瘍の境界病変

甲状腺腫瘍の新たな診断カテゴリーが、2017年の新WHO分類に採用されました。境界病変(borderline lesion)または低悪性度(low malignant potential)に分類される次の2つの病変です。現行の甲状腺癌取扱い規約には記載がありません。

  1. 乳頭癌様核を有する非浸潤性甲状腺性濾胞性腫瘍(NIFTP)

  2. 悪性度不明の高分化腫瘍(WDT-UMP)


NIFTP(noninvasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features)

NIFTPの腫瘍細胞は、乳頭癌で見られる特徴的な核所見を見るため、細胞診で悪性(乳頭癌)もしくは悪性疑い(乳頭癌疑い)と術前に推定されることがあります。主な遺伝子変異はRAS変異ですが、RAS点突然変異は組織構築が類似する濾胞型乳頭癌や濾胞性腫瘍に認められます。診断基準は次のとおりです。

  1. 被包化された境界明瞭な結節

  2. 濾胞構造からなる

  3. 乳頭癌に特徴的な核所見を有する

  4. 血管浸潤や被膜浸潤はない

  5. 腫瘍壊死はない

  6. 核分裂像<3個/10HPF

NIFTPは被包化された境界明瞭な結節です。肉眼的には、濾胞腺腫や腺腫様結節と区別がつきません。単結節性の腺腫様甲状腺腫です。NIFTPは共通の組織像と遺伝子異常から濾胞型乳頭癌の前駆病変であることが推測されています。


WDT-UMP(well differentiated tumor of uncertain malignant potential)

WDT-UMPは、境界明瞭な結節性病変で、線維性被膜を有し、内部は濾胞構造からなります。乳頭癌の核所見は弱いか部分的で、乳頭癌と診断するには所見が十分ではありません。遺伝子変異としてRAS変異が報告されています。腫瘍の定義は次のとおりです。

  1. 被包化された高分化濾胞上皮腫瘍

  2. 被膜浸潤や血管浸潤はみられない

  3. 乳頭癌の核所見に疑問がある

NIFTPと WDT-UMPの定義上の違いは、乳頭癌の核所見が十分にあるかないかです。しかしながら、どこから乳頭癌の核所見とするか不十分とするかの境目は病理医によって異なります。