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特発性冠動脈解離

特発性冠動脈解離(spontaneous coronary artery dissection; SCAD)は、非動脈硬化性心筋梗塞の原因となる超稀な冠動脈疾患です。冠動脈造影をした症例における頻度は0.1~1.1%程度との報告があります。また50歳未満女性の心筋梗塞の24.2%がSCADだったとの報告もあります。動脈硬化性リスクのない若年女性の心筋梗塞です。本症例の8割が女性です。



冠動脈造影検査では、解離による偽腔形成、偽腔内血腫により真の冠動脈内腔が圧排されることで起こる多彩な狭窄像が特徴的な所見です。通常の冠動脈造影検査では動脈硬化性病変との鑑別困難な症例があり、冠動脈血管内超音波検査(intravascular ultrasoud; IVUS)などが有用なことがあります。


SCADの症状は、胸痛、放散痛、呼吸困難、発汗、嘔気などで、臨床症状からの急性冠動脈症候群(acute coronary syndrome; ACS)との鑑別は困難です。心電図検査所見としては、ST上昇、ST低下とST変化なしがそれぞれ49%、7%、44%との報告があります。


確立された治療法はありませんが、冠動脈末梢病変に対しては保存的治療で経過を見ることが一般的です。これの予後は良好です。末梢病変では、障害された心筋組織が小さく限定的なためと考えます。


もちろん急性心筋梗塞を起こした範囲が広ければ、心室細動などの致死性不整脈、心不全、心破裂などの合併症も起こり得ます。また脳の循環不全から意識障害も併発します。


(参考)

1. Kamran M. et al: Spontaneous coronary artery dissection: case series and review.J Invasive Cardiol. 2008 Oct;20(10):553-9.

2. Saw J. et al: Nonatherosclerotic coronary artery disease in young women.Can J Cardiol. 2014 Jul;30(7):814-9.

3. Tweet MS. et al: Clinical features, management, and prognosis of spontaneous coronary artery dissection.Circulation. 2012 Jul 31;126(5):579-88.



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