後腹膜線維症

後腹膜線維症とは、腹部大動脈を中心として後腹膜に炎症性細胞の浸潤と線維化を起こす疾患です。背部痛や側腹部痛を主訴として、50歳代から60歳代の中高年に好発します。基本的には良性疾患ですが、尿管閉塞による腎機能障害や無尿で発症することもあります。男女比は2:1と男性に多いです。


後腹膜線維症の原因は特発性と続発性の2つに大きく分類されます。割合は前者が70%と後者が30%で、特発性後腹膜線維症が多いです。続発性後腹膜線維症としては、薬剤性、悪性疾患、腹部大動脈瘤、膠原病、感染症と外傷によるものがあります。





後腹膜線維症の症状としては、疼痛が一番多く、背部痛、側腹部痛、腹痛などが90%の症例に認められます。その他、体重減少、食欲不振、吐気・嘔吐、全身倦怠感や浮腫なども見られます。発症は、緩徐のことが多いですが、無尿などで突然に発症することがあります。


後腹膜線維症では、尿管閉塞を来すことも多く、水腎症や腎機能障害を起こし腎不全となります。ときに下大静脈や腸骨静脈には圧迫、狭窄、血栓形成が認められ、下肢の浮腫や間欠性跛行などを呈します。肝外門脈の閉塞から、食道静脈瘤や腹水などの門脈圧亢進症の症状を呈した症例もあります。


後腹膜線維症の検査では、非特異的な炎症反応を示すものが多く、貧血、血沈亢進、白血球増多、血中尿素窒素の上昇などが認められます。DIP、IVP、 CT、MRIなどの画像検査が有用です。CT検査では、腹部大動脈を中心に、辺縁明瞭で内部が均一濃度の軟部組織様の腫瘤像を呈し、大動脈に沿って上下方向へ広がりますが、大動脈前方への偏移や脊椎椎体骨の破壊はありません。尿管がんやリンパ腫などの悪性腫瘍との鑑別が必要です。


後腹膜線維症の最終診断には、悪性腫瘍との鑑別が必要となることが多いことから、開腹や経皮的針生検による組織診が実施されます。組織診断では、著名な線維化と炎症性細胞の浸潤が見られます。近年、画像診断技術が向上し、試験的にステロイド剤を1~2週間投与し腫瘍の縮小が認められれば、良性の後腹膜線維症と判断しても良いとの意見もあります。


後腹膜線維症の治療は、手術療法とステロイド剤を用いた薬物療法が中心です。尿管閉塞による水腎症や腎不全がある場合は、まず尿管ステント留置術や経皮的腎瘻増設術を実施します。手術は、開腹による尿管剥離術が行われ、尿管を周囲の線維組織から剥離し、後腹膜線維組織と離すために腹腔内や腸腰筋の外側へ移動し固定します。


内科治療としては、経口ステロイド剤が第一選択です。後腹膜線維症の初期で細胞浸潤が強い時期や炎症反応の強い症例で有効と考えられています。ステロイド剤の効果が不十分な例や再発症例には、免疫抑制剤の使用を考慮します。