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小腸内細菌異常増殖症

小腸内細菌異常増殖症(small intestinal bacterial overgrowth; SIBO)は、小腸内で細菌が異常に増えることにより生じる疾患です。SIBOは、小腸内の細菌数の増加と異常型を特徴とする非常に不均一な症候群です。SIBOの診断は、近位空腸吸引液1mL当たり10の5乗以上の細菌[すなわち、コロニー形成単位(CFU)]の所見と考えられています。正常値は≦10の4乗 CFU/mLです。



生体には、細菌の過剰増殖を予防する内因性防御機序がいくつもあります。たとえば、胃酸分泌、小腸の蠕動運動、無傷な回盲弁、腸液内の免疫グロブリン(分泌型IgA)、膵液と胆汁の静菌作用などです。


SIBOの原因は通常複雑で、抗細菌予防機序の破綻(無塩酸症、膵臓外分泌能低下、免疫異常)、解剖学的異常(小腸の通過障害、憩室、瘻孔、手術による盲端、回盲部切除の既往)、運動障害(強皮症、糖尿病による自律神経症、放射性腸炎、小腸の偽閉塞)と関連しています。


具体的な原因疾患としては、腸閉塞、消化管運動障害、慢性膵炎などが知られています。 SIBOはとくに開腹手術後に頻発しやすく、小腸の器質的障害と機能的障害により小腸の吸収・代謝といったサイクルが回らなくなって腸内細菌叢が異常増殖し、脂肪やビタミンB12を中心とする栄養素の吸収障害をきたします。


臨床症状は病変の重症度に応じて多かれ少なかれ表現され、原発性の基礎疾患によって修飾されます。SIBOは臨床的に無症候性のこともあれば、非特異的症状(腹部膨満、鼓腸、腹部不快感、下痢、腹痛)を伴う過敏性腸症候群に類似することもあります。より重症例では、吸収不良の徴候(体重減少、脂肪便、栄養不良)、肝病変、皮膚症状(酒さ)、関節痛および欠乏症候群(貧血、ビタミンD欠乏により誘発される低カルシウム血症におけるテタニー、代謝性骨疾患、ビタミンB12欠乏による多発性神経障害、腸のバリア機能障害など)がみられます。貧血は通常、ビタミンB12欠乏による大球性(巨赤芽球性)です。また、小球性鉄欠乏症(潜在性消化管出血による)または正球性(慢性疾患の貧血として)の可能性もあります。


複雑な非特異的消化不良愁訴(腹部膨満、腹部不快感、下痢、腹痛)、運動障害、小腸の解剖学的異常、および同化不良症候群(吸収不良、消化不良)の全ての症例でSIBOを考慮することが必須です。


SIBOを診断するための至適基準(gold standard)は、依然として空腸吸引物の微生物学的検査です。このような検体は、特殊なゾンデか小腸内視鏡で採取できます。また、水素呼気試験とメタン呼気試験は、現在最も重要な診断方法です。呼気中の水素、メタンと二酸化炭素を測定することで、小腸内細菌叢の状態が分かります。


ヒトでは、水素とメタンはもっぱら腸内細菌によってつくられます。すなわち、健康な人では大腸で、SIBOの場合は小腸でもつくられます。水素とメタンの約80%は放屁により排出され、20%は肺により呼気中に排出されことから、呼気中で測定できるわけです。


SIBOの治療は複雑です。基礎疾患の治療、栄養サポートおよび周期的な消化管選択的抗生物質が含まれます。SIBOの予後は通常重篤で、主にSIBOに至った基礎疾患によって決定されることになります。したがって生命保険加入時の評価は、RFCということですね。








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