医学豆知識メルマガVol.212 発作性上室性頻拍(PSVT)

正常な心臓は、右心房にある洞結節と呼ばれる場所から規則正しく心臓を動かすような電気信号が発生し、一方向に心臓全体に伝わります。しかし何らかの原因で余分な電気回路が出来ると、そこを伝わって心臓が早く動き、脈が速くなります。発作性上室性頻拍(Paroxysmal supraventricular tachycardia:以下PSVT)とは、発作性に突然脈拍が速くなり、しばらく続いた後に突然止まる頻拍症で、心房あるいは房室接合部と呼ばれる心室以外の組織が頻拍に関わっている不整脈をいいます。



症状

突然生じてしばらく続き、突然止まる動悸や胸部違和感として自覚されます。頻拍が生じていない時は全く正常なので、検診の心電図でも発作時以外は指摘されることはありません。頻拍が長時間続くと、心機能が低下してうっ血性心不全になることもあります。それ以外にも、頻脈のため血液の流れが悪くなり、起立時のふらつきやめまい、意識障害を生じることもあります。


原因

頻拍は解剖学的な刺激伝導路の旋回(リエントリー)によって発生します。リエントリー(旋回)とは、ゆっくりと興奮が伝わる遅い伝導路と、早く興奮が伝わる伝導路が両端で合わさる時に、伝導速度は速いが不応期は長く、一方伝導速度は遅いが不応期は短いという条件が成立した時に生じる現象です。代表的なものとして、房室結節回帰性頻拍、WPW症候群、心房頻拍があります。いずれも体位の変換に伴って生じることが多く、若年者では運動中に発作が生じることや、逆に睡眠中に生じることもあるようです。


検査

発作時の心電図が取れれば非常に有用ですが、なかなか難しいので、ホルター心電図を装着して24時間心電図検査を行います。この他、運動負荷心電図、心エコー、場合によっては心臓カテーテル検査や電気生理学的検査を行います。


診断

発作時の心電図で規則正しい頻拍で、QRS幅が正常で、QRS波とQRS波の間にP波が常に確認できれば診断は確実になります。確定診断には心臓の電気生理学的検査が必要で、頻拍の誘発と停止が可能な状況で頻拍中の興奮状態を見ることで原因を明らかにし、PSVTの種類の鑑別もします。

鑑別疾患:心房粗動、心房細動、心室頻拍、心室細動、心室粗動、上室性期外収縮、心室性期外収縮、洞性頻拍等があります。


治療と予後

症状が軽かったり、短時間で止まるようなら治療は必ずしも必要とは限りません。また、発作時も、息をこらえてお腹に力を入れる、冷たい水を飲む、頸動脈マッサージをする等の副交感神経刺激法でおさまることがありますが、頻拍が長期にわたり続くと心不全のリスクが高くなるので、専門医の受診は必要です。薬物療法では、房室結節の伝導を抑える薬物としてカルシウム拮抗剤、β―遮断薬、ジギタリス、ATP製剤等があります。緊急を要する場合や、薬物に抵抗性のある場合には、直流電流による電気ショックも選択肢の一つです。非薬物療法としては、頻拍が関わる組織を焼灼して頻拍を根治させる高周波カテーテル・アブレーションがあり、治療成績が良いため根治療法ともいわれます。


発作性上室頻拍、通常型心房粗動、心房頻拍、特発性心室頻拍等の不整脈では、基礎に心疾患がない場合には、カテーテル・アブレーションの成功率が90%程度と高く、薬物治療より効果的で安全性にも優れていることが示されています。(東京大学医学部循環器内科HP)


引受査定のポイント

現症については、死亡保険は保険料割増等の条件付~標準体、医療保険は引受延期~標準体での引受を考慮します。既往症については死亡保険も医療保険も無条件での引受を考慮できるでしょう。

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