全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)は、遺伝的要因を背景にウイルス感染などが誘因となって、抗核抗体などの自己免疫抗体を産生することによって起こります。SLEは、多臓器障害性の慢性炎症性疾患です。全身性紅斑性狼瘡ともいいます。抗核抗体(anti-nuclear antibody; ANA)とは、細胞の核内に含まれる多種の抗原物質に対する抗体群の総称です。SLEは膠原病の一つですが、最も著しく多彩な臓器病変を呈します。


SLEの多臓器障害の原因は、核・抗核抗体(DNA-抗DNA抗体)などの免疫複合体の組織沈着で、補体系の活性化などを介して炎症が惹起されると考えられています。多種類の自己抗体(抗ds-DNA抗体など)が血液中に検出され、女性に多く男女比は1:10で、好発年齢は20歳~40歳です。


皮膚・粘膜症状としては、顔面の蝶形紅斑とディスコイド疹が特徴的で、日光暴露で増悪します。急性期には筋肉痛や関節痛が見られます。関節炎も起こしますが、関節リウマチのように骨破壊を起こすことはありません。口腔内や鼻咽腔に潰瘍が見られますが、ベーチェット病のように痛みをともなうことはありません。胸膜炎や心膜炎を起こすこともあります。SLEの半数の症例で、腎病変のループス腎炎により蛋白尿が出て、放置すると重篤となります。またけいれん発作やうつ病などの精神障害を来す神経学的病変(CNSループス)を合併するのも重症です。


SLEの診断基準としては、米国リウマチ協会による1997年改訂基準があります。それは次の11項目からなり、この項目のうち4項目以上を満たす場合をSLEと診断します。


① 顔面紅斑(蝶形紅斑)

② 円板状皮疹

③ 光線過敏症

④ 口腔内潰瘍 (無痛性で口腔あるいは鼻咽腔に出現)

⑤ 関節炎(2関節以上で非破壊性)

⑥ 漿膜炎 (胸膜炎あるいは心膜炎)

腎病変 (0.5g/日以上の持続的蛋白尿か細胞性円柱の出現)

神経学的病変 (痙攣発作あるいは精神障害)

⑨ 血液学的異常(溶血性貧血、4,000/mm3以下の白血球減少、1,500/mm3以下のリンパ球減少又は10万/mm3以下の血小板減少)

⑩ 免疫学的異常(抗2本鎖 DNA (dsDNA)抗体陽性、抗 Sm 抗体陽性又は抗リン脂質抗体陽性(抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、梅毒反応偽陽性)

⑪ 抗核抗体陽性(ANA陽性)


皮膚病変や関節炎のみを示すSLEは軽症と考えられます。しかしループス腎炎、CNSループス、抗リン脂質抗体症候群、間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症、ループス腹膜炎などの内臓疾患を合併するSLEは重症です。


SLEの治療は、発熱、関節炎を軽減するために非ステロイド系消炎鎮痛剤を用います。免疫異常を軽減するためには、ステロイド剤が必須です。ステロイド抵抗性がある場合には、ステロイドパルス療法や免疫抑制剤の投与が検討されます。高血圧がある場合には降圧剤を投与して腎機能障害の進行を抑制します。ループス腎炎から腎機能が急速に悪化する場合には人工透析の導入を考慮します。


SLE患者の多くは、寛解と増悪を繰り返して慢性に経過します。SLEの予後は近年著しく改善し5年生存率も95%以上となっています。SLEの死因は、以前は腎不全であったものが、日和見感染症による感染症が死因の第1位を占めるようになりました。


(参考文献)

1. 難病情報センター|全身性エリテマトーデス

  https://www.nanbyou.or.jp/entry/215

2. 日本リウマチ学会編「全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019」南山堂 http://www.nanzando.com/books/23471.php

3. 後藤内科医院「全身性エリテマトーデス」 http://goto-naika.c.ooco.jp/sle/

4. 後藤内科医院「SLEの治療2020-21」 http://goto-naika.c.ooco.jp/sle/SLE2020.html