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僧房弁狭窄症

僧房弁狭窄症(mitral stenosis; MS)とは、僧房弁自体の硬化により、左心房から左心室への血流が阻害される病態をいいます。原因は、ほとんどがリウマチ熱です。リウマチ熱の症例数が激減したことにより、僧房弁狭窄症の症例数も減少しています。


小児期にリウマチ熱に罹患した一部の患者において、7~8年の経過で弁の障害が発症し、10年以上の無症状期間を経て心不全症状を呈するようになります。すなわち息切れ、呼吸苦、浮腫などの症状が起こります。また、心房細動の併発から動悸を自覚することもあります。衛生状態の改善によってリウマチ熱が稀になったことで、僧帽弁狭窄症は激減しています。しかし、とある疫学研究では男女共に70歳を過ぎてから弁膜症の有病率が急増していることが報告されており、特に75歳以上になると8人に1人以上の確率で中等度以上の弁膜症が認められます。そして弁膜症のなかでも僧帽弁疾患の伸びが際立ち、有病率も高くなっています。

無症状のまま経過することが多い疾患ですが、症状が進行すると運動時に息切れするようになります。進行と共に、散歩や着替えなどの軽い動作時または安静時にも呼吸が苦しくなります。血液の循環が悪くなるため、むくみや食欲低下も症状として現れます。


僧房弁狭窄症の診断確定は、主に心臓超音波検査によります。主にエコー検査で診断します。これにより弁の大きさや長さ、硬さの程度、逸脱の有無や血流の様子など多くの項目を調べられます。これらの情報を総合し、主たる原因や重症度を判断します。より詳細に状態を観察したい場合は、心臓カテーテル検査や、超音波の端子を食道内に入れて心臓の裏側から超音波を当てる「経食道心エコー」が行われることもあります。また、原因となっている他の疾患(不整脈)の有無を調べるために心電図検査も行い、診断します。


僧房弁狭窄症の治療は、患者さんの状態により異なります。症状が軽度であれば、薬による治療を行います。心臓の負担を減らす薬や不整脈を予防する薬、血液を固まりにくくし、血栓を予防する薬を用います。その他、カテーテルを用いて硬くなった弁にバルーンを挿入し、狭くなった弁を広げる治療もあります。(=経皮的経管的僧帽弁交連裂開術(PTMC))硬くなった弁にメスで切り込みを入れて動きを改善させ、血流を良くする外科的治療方法もあります。(=直視的下僧帽弁交連切開術(OMC))僧帽弁を切除し、人工弁に置換する僧帽弁置換術(MVR)という手術もあります。


術後の回復には2週間ほどかかり、術後、心不全に対するお薬として利尿剤や血管拡張剤などが必要な場合もあります。退院後は、1年に1度心臓超音波検査による置換弁や形成した弁の機能チェックが必要です。




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