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ベーチェット病

疾患概念・原因

 膠原病類似疾患の1つで、全身性の小血管炎による多彩な病状を呈します。全身のほとんどの臓器に急性炎症を反復する難治性疾患です。青年期に好発し、10歳以下の小児期や50歳以降の発症は極めて少なく、遺伝的要因ではHLA-B51の保有率が50%と高く、男性のほうが重症例は多くみられます。





疫学・症状・経過

 20歳~30歳代で、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍(口腔粘膜に好発する1~3㎜の浅い潰瘍で、円形・有痛性で表面に白苔や周辺の発赤を伴います。アフタ性口内炎とも云います。)や下腿伸側の有痛性の結節性紅斑、皮下の血栓性静脈炎、ぶどう膜炎・虹彩毛様体炎・網脈絡膜炎や視力障害、有痛性の外陰部潰瘍が見られます。精巣上体炎、回盲部から上行結腸の難治性易穿孔性消化管潰瘍、関節変形のない関節炎、血管炎、精神神経症状などをきたします。ベーチェット病では回盲部の消化管腫瘍を伴う腸管ベーチェット、血栓性静脈炎などの血管炎を伴う血管ベーチェット、片麻痺・痴呆症・構音障害を伴う神経ベーチェットがあります。


検査・診断

 皮膚症状により皮膚が過敏になり注射や採血で針を刺したあと、発赤・腫脹・小嚢胞を作ることがあります。それを応用した皮膚針反応が陽性のときベーチェット病を疑います。特異的な検査が無いことから、臨床症状の組み合わせで行いますが、血清補体価の上昇やHLA-B51(+)であれば診断は確実です。また、白血球や血沈の上昇やCRP(+)は病態を知る上で重要なサインとなります。以下に、ベーチェット病の診断基準を示す。


ベーチェット病の診断基準(厚生省研究班)

主症状 1.口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍 2.皮膚症状  a)結節性紅斑  b)皮下の血栓性静脈炎  c)毛嚢炎様皮疹、ざ瘡様皮疹 3.眼症状  a)虹彩毛様体炎  b)網膜ぶどう膜炎  c)以下の所見があればa)、b)に準ずる  視神経萎縮、虹彩後癒着、水晶体上色素沈着、毛脈絡膜萎縮、白内障、緑内障 4.外陰部潰瘍 副症状 1.変形や硬直を伴わない関節炎 2.副睾丸炎 3.回盲部潰瘍で代表される消化器病変 4.血管病変 5.中等度以上の中枢神経病変 病型診断の基準 1)完全型  経過中に4症状が出現したもの 2)不全型  a)経過中に3主症状と2副症状が出現したもの  b)経過中に定型的眼症状とその他の1主要症状、   あるいは2副症状が出現したもの 参考となる検査所見 1.皮膚の針反応 2.炎症反応   赤沈値の亢進   血清CRP高値   末梢白血球数の増加 3.HLA-B51の陽性 4.病理所見


治療・予後

 アスピリン、インドメタシン、コルヒチンなどの消炎鎮痛薬と免疫抑制薬が基本となります。 眼症状の発作時にはステロイド点眼薬と虹彩癒着防止のため散瞳薬を使います。眼症状は青年期の失明の最大原因疾患です。皮膚症状にはステロイド軟膏の塗布が効くことが多く、内服薬としてコルヒチン、セファランチンなどが効果を示すことがあります。関節炎にはコルヒチンが有効とされ、対症的には消炎鎮痛薬を使用します。血管病変にはステロイドと免疫抑制薬が主体となります。腸管病変にはステロイドとスルファサラジン、アザチオプリンなどを使用しますが、難治性であることも少なくなく、最近ではTFN阻害薬の有効性が報告されています。消化管出血や穿孔は手術を要しますが、再発率も高く、術後の免疫抑制剤療法も重要です。中枢神経病変には急性期の炎症にはステロイドパルス療法を使用します。


査定のポイント

 生命予後は悪くないため、生命保険については条件付きでのお引受が可能でしょう。医療保険については、様々な病変が現れるためお引受は困難と考えます。

 



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