フォン・レックリングハウゼン病

フォン・レックリングハウゼン病とは、1882 年にドイツのFriedrich Daniel von Recklinghausenによりはじめて学会報告された疾患で、各種臓器に多彩な病変を生ずる遺伝性疾患です。1990年に原因遺伝子が明らかとなりました。神経線維腫症Ⅰ型ともいいます。カフェ・オ・レ斑と神経線維腫を主徴とし、皮膚、神経系、眼、骨などに多種病変が年齢変化とともに出現します。常染色体優性遺伝の全身性母斑症です。日本の患者数は約40000人と推定され、出生約3000名に1人の割合で起こります。罹患率に人種差はなく、常染色体優性の遺伝性疾患であるものの、半数以上の患者は孤発症例であり、突然変異により生じます。



フォン・レックリングハウゼン病の原因遺伝子は、第17番染色体長腕(17q11.2)に位置し、ゲノムDNAは350kbと巨大で60のエクソンがあります。この遺伝子からニューロフィブロミン(neurofibromin)と呼ばれる分子量250kDaの蛋白質が合成されます。ニューロフィブロミンはRas蛋白の機能を制御し癌抑制作用を有すると考えられています。その異常により多種病変が起こると推測されています。診断基準(神経線維腫症Ⅰ型)は、次のとおりです。


1.主な症候

(1)カフェ・オ・レ斑

扁平で盛り上がりのない斑であり、色は淡いミルクコーヒー色から濃い褐色に至るまで様々で、色素斑内に色の濃淡はみられません。形は長円形のものが多く、丸みを帯びた滑らかな輪郭を呈します。


(2)神経線維腫

皮膚の神経線維腫は思春期頃より全身に多発します。この他末梢神経内の神経線維腫(nodular plexiform neurofibroma)、び漫性の神経線維腫(diffuse plexiform neurofibroma)がみられることもあります。

2.その他の症候

① 皮膚病変−雀卵斑様色素斑、大型の褐色斑、貧血母斑、若年性黄色肉芽腫、有毛性褐青色斑など。

骨病変−頭蓋骨・顔面骨の骨欠損、四肢骨の変形・骨折、脊柱・胸郭の変形など。

③ 眼病変−虹彩小結節(Lisch nodule)、視神経膠腫(optic glioma)など。

脳脊髄腫瘍−神経膠腫、脳神経及び脊髄神経の神経線維腫など。

⑤ 大脳白質病変(unidentified bright object; UBO)

消化管間質腫瘍(GIST)

褐色細胞腫(pheochromocytoma)

悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor; MPNST)

学習障害・注意欠陥多動症(ADHD)

注)視神経膠腫は、NF1の4%に発症します。

UBOは、脳MRI検査で、T2/フレアで何か特定できない高信号をいう。


3.診断のカテゴリー

カフェ・オ・レ斑と神経線維腫がみられれば診断確実です。小児例(pretumorous stage)ではカフェ・オ・レ斑が6個以上あれば本症が疑われ、家族歴その他の症候を参考にして診断します。ただし、両親ともに正常のことも多いです。成人例ではカフェ・オ・レ斑が分かりにくいことも多いので、神経線維腫を主体に診断を行います。


レックリングハウゼン病の生命予後は比較的良好のため、軽度特別条件付で生命保険加入は可能と考えられます。対症療法として、腫瘍切除手術を繰り返す可能性があるため、医療保険とがん保険の加入は難しいでしょう。