エナメル上皮腫

エナメル上皮腫(ameloblastoma)とは、顎口腔領域に発生する良性腫瘍で、口腔内腫瘍全体の約1%を占めます。また歯原性腫瘍の中では約9~11%を占めています。歯胚の構成部位の1つであるエナメル器が腫瘍化することで起こります。肉眼的腫瘍像によって次の3種類に分類されます。

(1) 単嚢胞型エナメル上皮腫

(2) 骨外型/周辺型エナメル上皮腫

(3) 転移性エナメル上皮腫

エナメル上皮腫は、歯原性腫瘍の中で最も多く発症し、好発年齢は10~30歳です。男女比は3:2と男性にやや多く、好発部位は下顎大臼歯部です。次いで下顎枝部、前歯部、小臼歯部の順に発生しやすいです。


発病初期には自覚症状がないことが多いです。数十年にわたる長期の経過となることもあります。ほとんどの病変が下顎骨内に生じることから、悪化するまでは顔面や口腔内に病変が現れにくのが特徴です。場合によっては、歯科検診の際に偶然発見されることがあります。エナメル上皮腫は症状が乏しく有病率も低いことから、早期発見が難しい疾患の1つです。

少し進行したエナメル上皮腫の症状としては、歯肉や頬部の無痛性または痛みを伴う膨隆と腫脹、疼痛、歯茎の動揺や咬合痛み、抜歯窩治癒不全などがあります。さらに腫瘍が歯肉や骨を超えて増殖した場合、感染症を併発した場合には、潰瘍や排膿などを認め、疼痛、知覚麻痺、歯の動揺、出血を起こすことがあります。


エナメル上皮腫の臨床診断は、画像診断検査によります。一般にエナメル上皮腫は、境界明瞭な単房性あるいは多房性のエックス線透過性を示す病変です。比較的境界明瞭なエックス線透過性を示す病変として鑑別すべき腫瘍には以下の疾患があります。

・角化嚢胞性歯原性腫瘍

・歯原性粘液腫

・石灰化嚢胞性歯原性腫瘍

・腺腫様歯原性腫瘍

・エナメル上皮腫線維腫

・神経鞘腫

その他に、単純性骨膿胞、脈瘤性骨嚢胞、含歯性嚢胞、歯根嚢胞などがあります。


エナメル上皮腫の治療は、腫瘍とともに顎骨を切除する顎骨切除法と、顎骨の形態や機能の温存を重視して顎骨切除行わない顎骨保存療法が一般的です。治療後の再発率は、前者では低く、後者では高いと報告されています。原発巣の再発が術後10年経過しても起こることがあるため、十分に慎重な長期間の経過観察が必要です。

多房性のエナメル上皮腫は、再発率が高く、悪性転化(二次型エナメル上皮癌)の報告もあり予後不良です。エナメル上皮癌を示唆する画像検査所見は、境界不明瞭、骨破壊、周囲組織への浸潤などが見られます。


したがって、医療保険等の引受査定については、術後の十分な経過観察期間を経た被保険者であれば引受可と考えます。


(参考)

歯原性腫瘍,囊胞の WHO 分類(2017 年改訂)について

https://www2.tecomgroup.jp/books/3000/pdf/ANS2018.pdf