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ウイルス関連血球貪食症候群

過日、テニスの夏合宿から帰宅した女子大生が、風邪様の症状から近医を受診するも熱が下がらず、数日間経過して大学病院を受診し、EBウイルス関連血球貪食症候群と診断されたという症例がありました。残念なことに10日間後にDICから死亡しました。





ウイルス関連血球貪食症候群(virus-associated hemophagocytic syndrome; VAHS)は、血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome; HPS)の1つで、高熱の持続、肝脾腫、汎血球減少、肝機能障害、播種性血管内凝固症候群(DIC)などを呈する症候群です。リンパ網内系組織を中心に組織球の増加とそれによる赤血球貪食像が見られます。HPSには原発(先天性)HPSと二次性(反応性)HPSがありますが、VAHSは二次性HPSの中でも比較的頻度が高く、軽症例から死に至る重症例まで幅広い臨床像を呈します。

VAHSの原因として報告されているウイルスは下記のとおりです。

・EBウイルス

・サイトメガロウイルス

・水痘帯状疱疹ウイルス

・単純ヘルペスウイルス

・HHV-6

・HHV-8


上記のヘルペス属ウイルス以外では、アデノウィルス、デングウイルス、肝炎ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルスなどの感染でも発症する。ウイルス関連赤血球貪食症候群の臨床像や予後はウイルスによって異なります。


血液検査の所見としては、進行性の血球減少が重要です。血小板の減少は、DICの所見とも重なります。生化学検査の所見としては、溶血を示唆する高LDH血症と高ビリルビン血症があり、高フェリチン血症と高中性脂肪血症が特徴です。インターフェロンγ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)は予後因子として重要です。また、可溶性sIL-2受容体(sIL-2R)が発症時に極端に高い場合にも注意が必要とされます。 HPSの本態は、何らかの原因による宿主免疫応答の破綻であり、活性化されたリンパ球やマクロファージを中心とした制御不能な免疫応答の反映と考えられています。活性化されたT細胞によりサイトカインが過剰産生され、それにより活性化されたマクロファージが血球を貪食し、新たなサイトカインが産生放出されます。T細胞とマクロファージ以外にも、NK細胞、NKT細胞などや、それら細胞間の複雑なネットワークが関与していると推定されています。



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