変形性頚椎症(cervical spondylosis; CS)は、頚部や肩にかけての漠然としたこりや疼痛を主症状とする疾患です。加齢により生じた頚椎の骨棘がレントゲン検査で観察されると変形性頚椎症と診断されます。
本疾患の原因は、椎間板・関節・靱帯の老化にあります。加齢により椎間板が老化して水分が減少し、弾力性がなくなる(椎間板症)と、脊椎骨の縁の部分が変形(変形性脊椎症)して、椎体間の隙間が狭くなり脊柱が不安定になることから、周囲の神経線維や神経根が刺激されます。またこのような時に椎骨に骨棘が形成され、この骨棘が近傍の神経を刺激することもあります。これを頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症とよびます。骨棘は、骨に加えられた刺激に反応して骨組織が増殖し、棘状になったものです。骨棘形成ともいいます。
変形性脊椎症は発症部位により変形性頚椎症と変形性腰椎症に分けます。なお、本疾患の診断において、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが否定されていることが必要です。
治療は、加齢現象の一つであるため対症療法が主として行われます。薬物療法では非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や筋弛緩薬を投与し、疼痛が強い時は、局所麻酔薬を用いて神経ブロック注射が行われます。手術適応となることは少ないようです。しかし頚椎症性脊髄症が進行し上肢や下肢の運動障害を起こしている場合には手術を考慮します。この運動機能障害は、日本整形外科学会頸部脊椎症性脊髄症治療成績判定基準 の上肢運動機能Ⅰと下肢運動機能Ⅱで評価します。基準の以下のとおりです。
I.上肢運動機能
0.箸又はスプーンのいずれを用いても自力では食事をすることができない。
1.スプーンを用いて自力で食事ができるが、箸ではできない。
2.不自由ではあるが、箸を用いて食事ができる。
3.箸を用いて日常食事をしているが、ぎこちない。
4.正常
注1 きき手でない側については、ひもむすび、ボタンかけなどを参考とする。
注2 スプーンは市販品を指し、固定用バンド、特殊なグリップなどを使用しない
場合をいう。
II.下肢運動機能
0.歩行できない。
1.平地でも杖又は支持を必要とする。
2.平地では杖又は支持を必要としないが、階段ではこれらを要する。
3.平地・階段ともに杖又は支持を必要としないが、ぎこちない。
4.正常
注1 平地とは、室内又はよく舗装された平坦な道路を指す。
注2 支持とは、人による介助、手すり、つかまり歩行の支えなどをいう。
頚髄症では、上記の上肢運動機能と下肢運動機能のいずれかが2点以下の場合に手術治療が勧奨されます。手術には、前方除圧固定術、椎弓形成術などがあります。
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