医学豆知識メルマガVol.213 甲状腺がん

甲状腺は、甲状軟骨(のどぼとけ)のすぐ下にあり、気管を前から取り囲み、羽を広げた蝶のような形をした、10~20グラム程度の小さな臓器です。基礎代謝の亢進、脳や骨の成長、脂質や糖の代謝等に関与する甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺がんは甲状腺にできる腫瘍(結節性甲状腺腫)のうち悪性のものをいいます。



症状

通常は、しこり(結節)以外の症状はありませんが、違和感、呼吸困難感、嗄声、誤嚥、圧迫、疼痛、血痰などの症状が出てくることがあります。


原因

はっきりとした原因は分かっていませんが、若い頃(特に小児期)の放射線被爆は原因のひとつと考えられています。また、髄様がんは血縁者にかかった人がいると発生しやすくなると考えられています。 乳頭がん:

甲状腺がんの約90%を占める高分化がんで、進行が遅く、一部を除き経過が良好です。 濾胞がん:

甲状腺がんの約5%を占める高分化がんで、肺や骨などに転移する一部を除き、治療後の予後は比較的良好です。 低分化がん:

甲状腺がんに占める割合は1%未満ですが、乳頭がんや濾胞がんの様な高分化がんに比べると遠隔臓器に転移しやすく、未分化がんに進行することがあります。 髄様がん:

甲状腺がんの1~2%を占め、進行が速く、転移しやすい傾向にあり、遺伝性の場合もあります。 未分化がん:

甲状腺がんの1~2%を占め、進行が速く、周囲の反回神経や気管、食道などに浸潤したり、肺や骨などに転移しやすく、最も悪性度が高いものです。 悪性リンパ腫:

甲状腺がんの1~5%を占め、甲状腺全体が急速に腫れたり、嗄声や呼吸困難が生じたりします。橋本病(慢性甲状腺炎)と関連しているケースが多いといわれています。


検査と診断

問診で、家族歴や放射線被ばく歴を聴き、甲状腺を触診し、腫瘍の有無や大きさ、硬さや広がりを調べます。超音波エコー検査では内部にあるしこりの性質や周囲の臓器との位置関係やリンパ節への転移の有無を調べ、悪性の疑いがあれば、そのまま注射針を刺して細胞をとる「穿刺吸引細胞診」という検査を行います。乳頭がんの場合は、細胞診で診断がほぼ確定します。CT,MRIも有用な検査です。血液検査では、甲状腺ホルモンである、FT3,FT4、TSH、サイログロブリンや、髄様がんの場合にはカルシトニンやCEAを、治療の効果や予後の推測に用います。

鑑別疾患には腺腫様甲状腺腫、濾胞腺腫、甲状腺嚢胞、甲状腺機能亢進症、橋本病があります。


治療と予後

治療の主体は手術で、がんのある場所や大きさ、転移の有無などによって決められます。甲状腺全てを摘出する全摘術、甲状腺の約2/3以上を切除する亜全摘術、片側の甲状腺(右葉か左葉)を切除する葉切除術、峡部も一緒に切除する葉峡部切除術があります。なお、頭頚部癌診療ガイドライン2018によると、乳頭がん・濾胞がんの場合で、55才未満の場合の病期は、転移がないM0(Ⅰ期)と転移があるM1(Ⅱ期)の2つだけで、Ⅲ期、Ⅳ期はないのが特徴です。

 気管傍リンパ節への転移が疑われる場合には、気管周囲郭清を行い、頸部リンパ節への転移があれば、頸部郭清を行います。手術の際には、反回神経や副甲状腺をなるべく温存する様にします。手術後、場合によっては、放射性ヨード内服療法が行われたり、未分化がんでは、術後の補助療法として、放射線治療もしくは化学放射線療法が行われることがあります。未分化がんで切除不能の場合には、化学療法、放射線療法、分子標的療法を組み合わせた集学的治療が行われます。悪性リンパ腫の場合には、手術ではなく、薬物療法+放射線外照射が行われます。

 甲状腺癌の9割を占める乳頭がんの10年生存率は95%前後なので良好といえます。次に多い濾胞がんでも10年生存率は90%前後です。したがって、転移があり病期が進行していたり、その他の悪性度の高い甲状腺がんを除けば全体としては比較的予後良好といえます。


引受査定のポイント

基本的には悪性腫瘍の査定に準じた取扱いとなりますが、乳頭がん・濾胞がんで55才未満であれば引受緩和も考慮できます。


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