脳の中では神経細胞が電気信号でお互い連絡しあい、常に調和のとれた活動をしていますが、何らかの原因で電気信号の調和が乱れてしまうと、意識を消失したり、痙攣が生じたり、急に動きが止まるといった症状が出現します。世界保健機構(WHO)では、てんかんを「種々の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な放電から由来する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見の表出が伴う疾患」と定義しています。有病率は厚生労働省の2013年の研究では1000人あたり7~8人と推定され、患者数については日本てんかん協会のHPでは全国に約100万人いると推定されています。また、小児と高齢者で特に罹患率が高く2峰性です。
原因
脳の神経細胞の一部が異常に興奮する事が原因ですが、小児の場合は脳の形成異常、出生時の仮死状態や低酸素、出生後の細菌やウイルス感染による髄膜炎や脳炎から発症することもあります。高齢者で脳卒中や脳腫瘍、脳外傷等の合併症と特定できるものは、症候性てんかんと呼ばれます。検査をしても原因がはっきりしないものは特発性てんかんと呼ばれます。
分類
最初から一気に脳全体が興奮状態になる全般発作と、脳の一部から興奮が始まる部分発作の大きく2つに分かれ、そこから細分化されるのが古くからある分類です。全般発作の中には、強直発作、間代発作、強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作があり、部分発作には、単純部分発作と複雑部分発作があります。なお、2017年の新しい分類では、焦点起始発作と全般起始発作、起始不明発作に大きく分類され、焦点起始発作は意識保持と意識減損に、さらに運動起始と非運動起始に細分され、全般起始発作は運動発作と非運動発作に細分されますが、基本構造は1981年の分類に類似しています。
診断・検査
者自身は意識を失って、救急車で搬送時には発作が止まっている場合も多いので、発作の持続時間、意識消失の有無、異常な行動の有無、震えの始まりや広がり、突っ張った姿勢だったか等、発作時の目撃情報が重要となります。脳波検査は、頭に電極を張って脳の電気信号を記録する検査で、てんかんでは一番重要な検査です。CT-MRI検査では、原因となる脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、脳挫傷等の有無を調べます。脳の電気活動により生じる磁場を測定する脳磁図や、脳細胞の活動具合を画像化するPET/SPECT検査をすることもありますが一般的ではありません。血液検査では、ナトリウムやカルシウムの減少がないか調べ、薬の副作用のチェックや血中濃度を測定し、適切な量や内服薬の種類を決めます。
鑑別疾患
失神、低血糖等の意識消失を来す疾患や、非てんかん性心因性発作、一過性脳虚血発作(TIA)、一過性全健忘、過呼吸発作、急性症候性発作等があります。
治療と予後
重積発作での救急治療以外は、カルバマゼピンやバルプロン酸等による薬物療法が主ですが、難治性てんかんの場合には、外科的に病巣を切除する根治手術や、緩和手術として、脳梁離断術や、迷走神経刺激療法、深部脳刺激療法、反応性脳刺激療法等の電気刺激療法があります。
厚生労働省の難治てんかん研究のてんかんの分類と発作抑制率によると、特発性てんかんについては、部分発作では100%、全般発作でも70%抑制可能。症候性てんかんについては、部分発作では35%、全般発作では 20%の抑制と報告されています。原因や、障害されている部位によっては、運動の障害、知的障害、言語障害、認知障害、記憶障害、性格変化、自律神経症状等の合併症や各種精神・神経症状が後遺症として残る場合もあります。
引受査定のポイント
一般的な小児科受診年齢である15歳未満(中学生まで)は現症・既往症共に、死亡保険系も医療保険も延期がよいでしょう。15歳以上(高校生以上)は、現症(服薬中)は、死亡保険系は引受延期~保険料割増等の条件付での引受を考慮できますが、医療保険は延期とした
ほうがよいでしょう。既往症(服薬無)は、死亡保険系は保険料割増等の条件付での引受が考慮できますが、医療保険は延期としたほうがよいでしょう。告知対象外の5年超は、いずれも引受で問題ないでしょう。
本メルマガの内容については、配信日現在の医療情報、医療事情及び医療環境等のもとで記載しており、将来的な約束をするものではありません。また、あくまでも一般的な内容であり、個々のケースや保険会社各社様によって基準は異なることをご承知おきください。2020年3月
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