キャッスルマン病(Castleman's disease; CD)とは、病理組織学的にリンパ節の濾胞過形成と胚中心に向かって貫通する硝子化血管を特徴とするリンパ増殖性疾患群です。1950年代にマサチューセッツ総合病院のCastlemanらによって初めて報告されました。また、リンパ節の濾胞間領域にシート状に形質細胞が増生する症例が後にFlendrigらにより提示されています。病理診断学的に次の3型に分類されます。
(1) 硝子血管型(hyaline-vascular type)
(2) 形質細胞型(plasma cell type)
(3) 混合型(mixed type)
キャッスルマン病の臨床病型としては、単中心性(UCD)と多中心性(MCD)に分けられます。 さらにMCDは、HHV8-関連MCD、POEMS症候群MCDと特発性MCD(iMCD)に分類されます。
(1) 単中心性キャッスルマン病(unicentric Castleman's disease; UCD)
(2) 多中心性キャッスルマン病(multicentric Castleman's disease; MCD)
(ア) HHV8-関連MCD
(イ) POEMS症候群MCD
(ウ) 特発性MCD(iMCD)
小児から70歳代まで幅広い年齢層に見られ、発症年齢中央値はUCDが30歳代で小児例も多く、MCDは50歳前後で小児例は珍しいです。男女比は6:4くらいです。日本ではUCDよりもMCDの症例報告が多く、MCDの年間発症者数は推計120人程度と報告されています。
UCDでは、限局性の腫大したリンパ節腫瘤が見られますが、これ以外の自覚症状が乏しく、画像検査などで偶発的に見つかることがあります。病変部位は腹部が最も多いです。一部の症例は形質細胞型で、発熱、倦怠感、体重減少、脾腫、貧血、高γグロブリン血症などの症状を伴います。UCDは、腫瘍随伴性天疱瘡の重要な原因疾患としても有名です。
MCDでは、リンパ節腫脹、肝脾腫、発熱、倦怠感、貧血などがあり、ときに皮疹や浮腫、胸腹水、腎障害、間質性の肺病変、関節痛など様々な症状が認められます。
キャッスルマン病の診断基準は次のとおりです。
[診断基準]
A. 症状
複数の領域に腫大した(長径1cm以上の)リンパ節を認める。(リンパ節腫大)
B. 検査所見
リンパ節または臓器の病理組織所見が下記のいずれかのキャッスルマン病の組織像に合致する。
1.硝子血管型:リンパ濾胞の拡大と胚中心の委縮。硝子化を伴う血管の増生。 形質細胞は少ない。
2.形質細胞型:リンパ濾胞の過形成。濾胞間の形質細胞の著増。 血管新生が見られることもある。
3.硝子血管型と形質細胞型の混合型:1、2の混合所見。
C. ヒト・ヘルペスウイルス8型(HHV-8)
関連キャッスルマン病(免疫不全を背景としたHHV-8感染の見られるもの)を除外する。
UCDの場合、局所的な病変部位の外科的切除などが可能で、全摘除により予後が良くなります。HHV-8関連MCDの場合、2年以上の生存は難しい一方、リツキシマブなどの薬物療法により生存率が上がったとの報告もあります。またTAFRO症候を伴わないiMCDは、抗IL-6受容体抗体トシリズマブで適切な治療を行えば比較的予後が良好です。
参考文献
[1] キャッスルマン病診療ガイドライン令和 2年度初版
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