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医学豆知識メルマガVol.205 メニエール病

メニエール病は、激しい回転性のめまいと難聴・耳鳴り・耳閉感の4症状が同時に重なる症状を繰り返す内耳の疾患で、フランスの医師プロスペル・メニエールが、めまいの原因の一つに内耳性のものがあることを、1861年に初めて報告したことに由来しています。

 女性に多く、発症年齢は30代後半から40代前半にピークを持つ山型で、有病率は人口10万人あたり15~18人程度です。めまい患者のうち、メニエール病患者は5%~10%程度といわれています。主に一側性ですが、両側性に移行する場合も20~30%程度存在します。



原因

内リンパ液の産生と、内リンパ嚢における内リンパ液の吸収の不均衡により生じる内リンパ水腫が原因と考えられており、これにより前庭と蝸牛の感覚細胞が障害され、突発的で激しい回転性めまいと耳鳴りや難聴などの蝸牛障害症状の発作が繰り返されます。また、発症にはストレスが強く関与していることが分かっています。


検査・診断

低音難聴が認められるので、純聴力検査は必須です。また、メニエール病の原因は内リンパ水腫なので、グリセオールテスト、フロセミドテスト、蝸電図で内リンパ腫の存在が推定できます。さらに、眼振検査や平衡機能検査やカロリックテストなどで内耳障害の所見を確認し、自記オージオメトリー等の検査で聴覚補充現象を確認します。鑑別すべき除外診断のために、頭部のCTやMRI検査、頸部のレントゲン等も行います。日本めまい平衡医学会の診断基準では下記の1、2、3の3点を満たせばメニエール病と確定診断します。また、1と3、あるいは2と3のみの場合にはメニエール病の「疑い」としています。

  1.数十分から数時間の回転性めまい発作が反復する。

  2.耳鳴り・難聴・耳閉塞感がめまいに伴って消長する。

  3.諸検査で、他のめまい・耳鳴り・難聴を起こす病気が鑑別(除外)できる。


鑑別疾患

外リンパ瘻、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、遅発性内リンパ水腫、突発性難聴、内耳梅毒、ハント症候群、内耳炎、真珠腫性中耳炎、脳腫瘍、自律神経失調症、聴神経腫瘍、椎骨脳底動脈循環不全症、頚性めまい、心因性めまい、貧血、低血圧症、高血圧症、低血糖症、甲状腺機能異常、過換気症候群、薬剤によるめまい、脳血管神経障害、外傷による内耳障害等などがあります。

これらのうち外リンパ瘻や突発性難聴、聴神経腫瘍、内耳炎、真珠腫性中耳炎、内耳梅毒、脳血管・神経障害は、回転性のめまいと聴力症状の両方を伴い、メニエール病に似ているため特に注意して鑑別することが必要です。


治療と予後

内リンパ腫を軽減させるため、イソソルビド等の利尿剤や内耳の血流改善薬、炎症を抑えるステロイド剤や精神安定剤の他、嘔気を伴う眩暈発作時にはメイロンやグリセオール、トラベルミン、制吐剤などの点滴も行われます。難治で重症例には、内リンパ嚢開放術や前庭神経切断術、内耳部分破壊術等の手術の他、ゲンタマイシン鼓膜内注入術が行われることもあります。

生命に関わることは少なく、通常は1ヶ月程度で寛解し、その後再発がなければ完治となりますが、再発を繰り返し、重症であった場合には回転性めまいや吐き気は治るものの、難聴や耳鳴り等の聴力障害が残るケースもあります。


引受査定のポイント

現症については死亡保険系も医療保険も引受延期としたほうがよいでしょう。既往症については死亡保険系については特に問題ないと思われますが医療保険については、部位不担保等の条件付~無条件での引受を考慮できるでしょう。

本メルマガの内容については、配信日現在の医療情報、医療事情及び医療環境等のもとで記載しており、将来的な約束をするものではありません。また、あくまでも一般的な内容であり、個々のケースや保険会社各社様によって基準は異なることをご承知おきください。2020年1月


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